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2022.03.29

オンラインセミナー「パワーハラスメント等のハラスメント対策(防止措置)セミナー」レポート

クリーデンスは、2022年3月16日、本年4月1日より、パワーハラスメント対策が全ての企業の義務(通称パワハラ防止法)となることを踏まえ、アパレル企業の皆さまへ、「4月から全企業が対応必須となるハラスメント対策とは?~ファッション業界特有の事例を交え弁護士が解説~」と題したハラスメントセミナーを開催しました。

ハラスメント問題は、被害者本人が大きな損失を被るとともに、企業にとっても、表面化すると、簡単に数百万円~といった単位のリスクとなってしまう問題です。
例)貴重な人材流出リスクや生産性低下リスク、レピュテーションリスク、長時間労働や未払残業代、会社・経営者・役員への各種損害賠償責任リスクなど。

そこで、クリーデンスでは、ファッション・ローというファッション業界の法律問題の予防や解決に注力する、三村小松山縣法律事務所小松隼也弁護士海老澤美幸弁護士中内康裕弁護士 を講師に迎え、セミナーを開催いたしました。本レポートでは、当日のセミナーの概要をお伝えいたします。

レポート協力/資料・セミナー開催協力:unite株式会社(代表取締役 角田 行紀氏)


当日講師を務めていただいた弁護士の先生方

小松隼也 Junya Komatsu

小松隼也 Junya Komatsu

2009年 弁護士登録、長島・大野・常松法律事務所に入所
2011年 東京写真学園プロカメラマンコース卒業
2016年 Forhdam University School of Law(NY)にてファッションローを学ぶ
2019年 三村小松山縣 法律事務所 設立
ファッション業界の友人らからの相談が多かったことから、ファッションローを学ぶためにニューヨークに渡米。 帰国後は、専門家と法務部員の方との勉強会の定期開催や、行政への政策提案などを行ってきた。また、ブランドのコレクションの内容や戦略にも携わっている。

海老澤 美幸 Miyuki Ebisawa

海老澤 美幸 Miyuki Ebisawa

官僚を経験した後、宝島社にて雑誌『Spring』を担当。 ロンドンにてスタイリストアシスタントを経て、 フリーランスのファッションエディター/スタイリストとして 雑誌『ELLE japon』『Harper’s Bazaar』などで活動。 ファッション業界に詳しい法律家がいなかったことから、 ファッション業界の法律問題を専門とする弁護士に。ファッション関係者専用の法律相談窓 fashionlaw.tokyo主宰。 2019年より三村小松山縣 法律事務所に所属。

中内 康裕 Yasuhiro Nakauchi

中内 康裕 Yasuhiro Nakauchi

アンダーソン・毛利・友常法律事務所にて訴訟・紛争解決、国際倒産、M&A 等の案件に 従事した後、ファッション業界へのリーガルサービスの提供に強い関心を持ち、三村小松山縣 法律事務所に入所。2021年にバンタンデザイン研究所キャリアカレッ ジのファッションデザインコース、パターン・ソーイングコース卒業。文化服装学院非常勤講師(ファッションロー)。


「アパレル業界向け、ハラスメント対策(防止措置)セミナー」当日のアジェンダ

当日は、大きく分けて7つのパートに分けて、中内弁護士を中心にお話いただきました。
アジェンダは、次のとおりです。

※当日のセミナー資料より抜粋

本レポートでは、このアジェンダに沿って、レポートいたします。


当日アジェンダ「0.ハラスメントに関して企業が対応すべき事項」とは?

本年4月から、企業は、パワーハラスメントに対する対策が義務化されますが、企業が対策しなければないなら事項は、パワーハラスメントのみではありません。
セミナー内で、中内弁護士より、現状、企業が対応すべき事項について、大きく分けて次の4点が重要な点であると解説がありました。

  1. ハラスメント防止のための体制の整備等の措置義務(パワハラについて中小企業は令和4年3月31日までは努力義務)
  2. 相談や協力による不利益な取り扱いの禁止
  3. 国、事業者、労働者の責務の明確化
  4. 他社の従業員に対するセクシャルハラスメントへの対応(男女雇用機会均等法11条3項。努力義務。)

また、上記4点に伴い、企業がとるべき対策は、事前の準備と事後の準備の2つに分けて考えることができるとの解説がありました。

※当日のセミナー資料より抜粋

当日アジェンダ「1.ハラスメントの実態」とは?

次に、ハラスメントの実態についての解説がありました。

まず、厚労省の調査結果(令和2年度調査)によれば、約過去3年間の間に、勤務先で、各ハラスメントを一度以上経験したことのある人の割合は、

  • ・パワーハラスメントを受けた経験がある人:31.4%
  • ・顧客等からの著しい迷惑行為を受けたことがある人(いわゆるカスタマーハラスメント): 15.0%
  • ・セクシャルハラスメント10.2%

とのことでした。

この結果からも、企業内では、多くのハラスメント行為とその被害者がいることがわかります。
さらに、この調査は、全業種についてのものですので、アパレル企業においては、その業種の特殊性から、「セクシャルハラスメント」「カスタマーハラスメント」の経験者の数が、より多いのではないかという指摘もなされました。

セミナーを聴講いただいた方、また本レポートをご覧になった方は、想像以上に各種ハラスメントが発生していることに驚いた方も多いのではないでしょうか?


当日アジェンダ「2.ハラスメントとは?」とは?

ハラスメントについては、本年4月から対策が義務化されているのは、パワーハラスメントですが、既にセクシャルハラスメント、マタニティハラスメントについても対策が義務化されていることから、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメント、パワーハラスメントの3点について、解説いただきました。

セクシャルハラスメントとは?

まず、セクシャルハラスメントについて、男女雇用機会均等法において、定義されている、職場における「セクシュアルハラスメント」とは、

「職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されることをいいます。」

であるとの説明がありました。
また、この定義のみならず、具体的な判例も交えての説明があった後に、セクシャルハラスメントの判断基準として、次の資料とともに解説がありました。

※当日のセミナー資料より抜粋

マタニティハラスメントとは?

次に、マタニティハラスメントについて育児・介護休業法において、定義されている、職場における「マタニティハラスメント」とは、

「職場において行われる、上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業等を申出・取得した男女労働者の就業環境が害されることをいいます。」

との説明がありました。
なお、マタニティハラスメントは、不妊治療に対する否定的な言動を含め、他の労働者の妊娠・出産等の否定につながる言動や制度等の利用否定につながる言動で、当該女性労働者に直接言わない場合も含むこと注意が必要であるとの指摘と、マタニティハラスメントが発生する原因として、制度等の利用や請求をしにくい職場風土や、制度の利用ができることについて周知不足があげられるとの指摘も併せてなされました。
その後、判例と判断基準についての解説もありました。

パワーハラスメントとは?

3点目として、パワーハラスメントについて、改正労働施策総合推進法に、おいて定義されている、パワーハラスメントについて、次の4点を全て満たすものであるとの説明がありました。

※当日のセミナー資料より抜粋

また、パワーハラスメントについては、判断が難しいことから、また、代表的な6つの類型や、事例を用いて、どんな点が問題になるのかをご説明いただいた後、次の5つの判断基準について、説明いただきました。

※当日のセミナー資料より抜粋

当日アジェンダ「3.アパレル業界の特徴」とは?

アパレル業界は、その特徴から、各種のハラスメントが起きやすい環境であるとの指摘が海老澤弁護士からありました。まず、パワーハラスメントが起きやすい理由については、大きく分けると次の5つであるとの指摘がありました。

※当日のセミナー資料より抜粋

また、パワーハラスメントに限らずに言えば、女性職員が多いことから、セクシャルハラスメントやカスタマーハラスメントの被害者になってしまうというケースも多いとの指摘がありました。


当日アジェンダ「4.ハラスメントのリスク」とは?

ハラスメントのリスクについては、

  1. 被害者にとってのリスク
  2. 企業にとってのリスク
  3. 経営者・役員にとってのリスク
  4. 加害者にとってのリスク

と、それぞれについて、詳しい説明がありました。

1.被害者にとってのリスク

被害者のリスクについては、過去の事例(被害者が自殺してしまった事例)なども交えリスクについて、ご説明いただきました。

2.企業にとってのリスク

企業にとってのリスクについては、生産性低下・人材流出リスク、労災認定リスク、採用・売上への多大な悪影響があるレピュテーションリスク、声の大きな人や団体等の参加による炎上化リスク、各種損害賠償リスクについて、説明がありました。
また、簡単に数百万円のリスクになってしまう具体的な理由や、損害額の例や、被害者のうち、1人がある程度の損害を認められた場合、それが他の社員にも波及してしまうリスクについても言及がありました。

3.経営者・役員にとってのリスク

経営者・役員についても、経営に関する責任を負っていることから、会社同様に人材流出リスク、生産性低下リスク、レピュテーションリスクを負っているとの説明がありました。

また、役員個人についても、役員等の会社に対する損害賠償責任(会社法423条)、役員等の第三者に対する損害賠償責任(会社法429条)などがあることから、損害賠償責任を負うリスクがある旨の指摘がありました。

4.加害者にとってのリスク

加害者、本人が、刑事上責任、民事上の責任、社内規定等による懲戒・解雇等のリスク、さらに、その後の生活への悪影響などの各種リスクがあることは当然としたうえで、某市の水道局事件の判例(東京高裁H15.3.15 K市水道局事件)もあることから、傍観者(社内のいじめなどを制止等しなかったもの)についても損害賠償請求をされるリスクがあるとの説明が併せてなされました。

さらに、ハラスメントのリスクについては、まとめると、このようなリスクがあるとの説明がありました。

※当日のセミナー資料より抜粋

当日アジェンダ「5.企業が講ずべきハラスメント対策とは?」とは?

企業が講ずべきハラスメント対策については、一番初めに説明のあった、事前の準備と、事後への対応準備が必要であるとの解説があった後に、対象企業についての説明がありました。

今回のパワーハラスメント対策が必要になる企業は、労働者がいる全ての企業が対象になることから、パートやアルバイトが一人でもいる企業は対象になるとの指摘がありました。

その上で、雇用管理上の措置として、10項目 について対応が必要であるとの説明がありました。
その10項目はこちらです。

※当日のセミナー資料より抜粋

なお、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメントについても同様の対策義務(雇用管理上の措置義務)があるとのことであり、セクシャルハラスメントについては、上記10項目に加え、自社の労働者が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合の協力対応義務もあることに注意が必要であるとの解説も併せてありました。


当日アジェンダ「6.雇用管理上の措置をとれば対策は万全か?」とは?

その他の注意点として、発生じた事案のリスク区分を分けた対応の必要性、特に大切になる相談窓口対応のポイント、ハラスメント事案が発生した場合の対応のポイントについて、解説がありました。


まとめ:レポート編集後記

ハラスメント問題で最も大切なのは、ハラスメント問題を予防することができる体制を整備し問題の発生を予防することです。予防を実現するためには、継続的な周知・従業員教育が必要です。
ただ、人に関することなので、絶対に発生させないということは、ほぼ不可能だと考え、できるだけ早期に発見・対処をする方法を構築することが次に重要となります。今回の対応義務のひとつにもなっていますが、早期発見・早期対処のポイントになるのは、相談窓口です。
人員や予算に余裕があるならば、相談窓口の対応は、男女いずれにでもできるような体制の整備や、社内のみならず、外部相談窓口を活用するなど、社員が相談しやすい環境を整えるということも、結果的に企業にとってプラスの効果を生みますので、ぜひ、さまざまご検討ください。

(レポート協力:unite株式会社


補足

三村小松山縣法律事務所では、各階層向けのハラスメント研修や、ハラスメントに関する相談窓口運営や処分判断基準についての具体的アドバイス、また外部相談窓口サービスを提供されているそうです。

問合先:info@mktlaw.jp

unite株式会社では、各階層向けのハラスメント対策資料一式を5万円で販売しているそうです。
ハラスメント対策資料一式の内容

  • ・研修資料(経営層・人事向け/マネージャー向け/社員向け/相談窓口担当者向け研修)
  • ・アンケート
  • ・TOPメッセ―ジ
  • ・相談からの相談受付票、相談票、相談時確認票
  • ・行為者/第三者へのヒアリングシート、事前確認票
  • ・相談窓口向けマニュアル

問合先:03-6869-3227 / info@unitenco.co.jp


クリーデンスでは、今後もこのようなセミナーや講演会を企画してまいります。
テーマや登壇者についてのリクエスト、内容についてのご意見がございましたらお気軽にご連絡ください。
次回セミナーにつきましても、詳細が決まりしだい、メールや当ウェブサイト等にてご案内させていただきます。

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