アパレル企業特集
2016.12.14
三星毛糸株式会社(三星テキスタイル)
「世界一おもしろい生地屋に」三星毛糸の“伝統と革新”に迫る
毛織産業の聖地、岐阜・尾州地区で130年もの間、世界に誇る生地を生み出し続けてきた老舗繊維メーカー、三星毛糸。今回は、自社ブランド「MITSUBOSHI 1887」を岩田社長とともに立ち上げた伊佐 友美子さんにインタビュー。伝統に裏打ちされるクオリティや新たなチャレンジなどについてお話を伺いました。
※記事中の写真は協力工場のものを含む
今回、この方にお話を伺いました!
三星テキスタイルグループ 三星毛糸株式会社
伊佐 友美子さん
京都出身。ロンドンの美術大学でテキスタイル科のニットコースを専攻し、現地のアパレルブランドや手編みのブランドでデザイナーとして従事。帰国後、三星毛糸に入社し、新規ビジネスであるオリジナルブランド「MITSUBOSHI 1887」「mikketa(ミッケタ)」の担当として、企画から生産、営業、販促・広報、販売までオールラウンドで活躍中。
数々の世界一流ブランドからも高い評価を受ける、メイドインジャパンの生地
まず、三星毛糸について教えていただけますか?
三星毛糸は2017年に創業130年を迎える老舗繊維メーカー「三星テキスタイルグループ」の中核企業です。現在でこそニットやレディース、オリジナルブランドも展開していますが、元々はメンズスーツの生地を、国内外の一流ブランドに卸すところからスタートしました。
しかし、日本製の生地を使ったブランド製品は高額になってしまうケースもあり、限られたお客様にしかお届けできないのでは?という思いがありました。そこで「自分たちで製品にまで仕上げることで、良質な生地をより多くの方に楽しんでいただけるようにしたい」と2015年に生まれたのが、私が担当している自社ブランド「MITSUBOSHI 1887」です。
伊佐さんから見た三星毛糸の魅力をお聞かせください。
5代目社長である岩田の言葉を借りると、「伝統と革新」です。
岩田は、東京で商社や外資経営コンサルティングなどを経て28歳で社長に就任し、現在6年目です。新しいことへのチャレンジ精神にあふれ、“繊維”の世界だけに留まらず、広い人脈を活かして色んな業種の方々と色んなことをしてみたいというマインドの持ち主です。業界外で経験してきたということもあり、これまでにない視点で物事を捉えることができるんです。
「世界一おもしろい生地屋にする!」というのが岩田の夢で、130年間の伝統に新しいチャレンジを加えることで、「おもしろい」というプラスアルファの価値が生まれる。それが三星毛糸の魅力だと思います。
ものづくりから販売まで、ブランド運営に関わるすべてに携われる仕事。
伊佐さんは自社ブランドをご担当されているとのことですが、具体的な仕事内容についてお聞かせください。
岩田が構想した新ブランドをゼロから創るというのが入社以来の私の役割です。
入社時はちょうど「MITSUBOSHI 1887」立ち上げのタイミングだったので、ブランドのコンセプトメイキングから始まり、インターシャ(という編みの手法)の技術を学び、その特性に合う柄の図案を出し…という感じで始まりました。
その後は縫製工場を探して生産し、販路を開拓し、展示会に応募して出展してバイヤーに売り込み、百貨店からポップアップショップのお話をいただいた際にはブランドの紹介文を書き、プレスリリースを書いて配信し、ディスプレイを百貨店と一緒に考え、実際に店頭に立って販売までも行います。職種にすると、企画、生産、販促・広報、営業、VMD、販売と、いわゆるブランドとして必要なすべてを担っています。
これらの業務すべてお一人でされてらっしゃったのですか?!
基本的には岩田との二人三脚で、分からないことが出てきたら随時、社内外の専門家に聞いたり、立ち上げ時は外部MDの方にお世話になったりしながら進めました。ほとんどが初めて経験する仕事だったので分からないことだらけで、今思えばもっと効率的にできたと思うこともたくさんありますし、失敗もたくさんしてきました。
ひとつひとつ手探りだったんですね。
はい。個人的に一番大変だったのは生産で、そもそも仕様書の書き方も知らなくて、縫製工場へ依頼するにあたって必要なことを全然分かっていなかったんです。意図することをうまく伝えられなくて生地を無駄にしたり、生地を送り返す!と言われてしまったり。今は写真でイメージを伝えたり電話でコミュニケーションを取るようにしてスムーズにやりとりできるようになりましたが、当時の工場の方々にはたくさんご迷惑を掛けてしまいました…。
いろいろと大変なこともあった中、伊佐さんの支えとなっていた仕事のやりがいは何でしょうか?
私は接客が好きなので、頑張って作り上げた“ごほうび”のような気持ちで店頭に立つのが一番のやりがいになっています。
お客さまも、企画や生産に携わった者から直接接客を受ける機会はあまりないと思うので、作り手の立場として、生産背景や産地の話、生地の話などをすると、みなさん興味を持ってくださるんです。「作り手さんの思いが伝わって」「日本のものづくりを応援したいから」とお買い上げくださるお客さまもいらっしゃって。
確かに、デザイナー自身が店頭に立ってお客さまの反応を直接聞けるのは何よりの喜びかもしれませんね。
そうなんです。
あともうひとつあって、染色屋さんやニッターさんなど、作り手の方々とのコミュニケーションも好きな仕事です。
彼らは、自分たちの作ったものが最終的にどのような商品になったのか知らないことがほとんどなので、「こんな商品になって、今百貨店で販売していて、たくさんのお客さまが買ってくださったんですよ。」と話すと、「こんな商品になったんだ、かっこいいね」「自分の染めたものが東京の百貨店に並んでいるなんて、すごいね」と喜んでくれるのが嬉しいんです。
いわゆる“お客さまと作り手を繋ぐ”という仕事も、他ではなかなかできないことなので、大きなやりがいになっています。
人と話をして魅力ある商品を作ったり、その魅力を伝えたりという、「コミュニケーションが好き」というところが根底にあるのでしょうか?
もともと思いを込めて作っている人の話を聞くのが好きなんです。それをお客さまに伝えるのも好きで。
また、接客に限らずどんな仕事でもそうですが、コミュニケーションは丁寧に取らないと失敗します。それはこの三星毛糸での経験で身を持って感じたので、仕事をする上ですごく大切にしていますし、今後もそれは変わらないと思います。
ものづくりから携わり、Webを通じてお客さまのもとに届ける
そんな三星毛糸では現在、「MITSUBOSHI 1887」のスタッフを募集中ですが、こんな方に来ていただきたい、というメッセージをお願いします。
2017年の大きなチャレンジのひとつに「ECサイトでの直販を強化する」があります。
これまでは、まず認知度を上げるという意味でポップアップショップに力を入れてきましたが、次フェーズでは現在運営しているECサイトでの直販を強化すべく、ECサイト運営スキルを持った方に来ていただきたいです。Webの数値分析などを見て、次の打ち出しやキャンペーンの企画を考え、その反応を見ながらまた次の一手を考える、といったイメージです。
近年、アパレル業界でもEC強化に伴う採用ニーズが高まっています。そんな中でも、三星毛糸ならではの経験や魅力はありますか?
アパレルやセレクトショップなどでのECサイト運営と大きく違うのは、当社ではものづくりから関わっていけることです。ものづくりにこだわっている商品が好きで、ものを作ること、またはものが作られる工程から興味を持っているという方であれば、ここでしかできない貴重な経験を積むことができると思います。
産地だからこそできる環境ですね。
東京だからできる仕事がたくさんあるのと同じように、産地でしかできない仕事がたくさんあります。
私はデザイナーからスタートして経験を広げ、作り手にとってお客さまの顔を見て接客することでさまざまな発見があることを知り、そのことが何よりの楽しさになりました。逆もまた然りで、売り手がものづくりの現場に足を運び、その工程を知り、作り手とコミュニケーションを取ることもすごく大切で、それは絶対に“売る”という仕事にも活きてきます。
しかし、今の日本のものづくりから販売までのプロセスを考えると、そこまでの経験ができる環境って実はそんなに多くないような気がしています。
「本当は、もっともっとものづくりに近い仕事がしたい」「メイドインジャパンのものづくりを、Webを使って広めたい」「自分では作れないけど、作り手の人々と一緒に働きたい」そんな思いを持った方がもしいらっしゃれば、ぜひ三星毛糸でこんな働き方があるんだということを知っていただけると嬉しいです。
「こんな仕事がしたかった!」という方のご応募を心からお待ちしています。
伊佐さんにASK!
三星毛糸への入社のきっかけは?
ロンドンから帰国する直前に展示会のコーディネーター兼通訳のお手伝いをしていたときに、岩田と出会い、日本企業ブースで名刺交換と挨拶をしたのがもともとの始まりです。
帰国後、繊研新聞の1面に『三星毛糸が海外への販路拡大に力を入れている』という記事が載っていて。よく読んでみると、テキスタイルやニットのものづくりができて、海外進出で英語も活かせて、「自分のやってきたことが役立つかもしれない!」と感じて岩田に面接の問い合わせメールを送ってみたんです。すると「今、人を探しているので面接に来ませんか」と返答をいただいて、トントン拍子で話がまとまり、入社しました。
地方から都心に出て働く話はよくありますが、今回、伊佐さんはその逆の選択をしました。抵抗はなかったでしょうか?
馴染みのなかった土地なので、まったく不安がなかったかと言えば嘘になりますが、私にとっては「どこで働くか」よりも、「やりたいことができる環境」のほうが大事でした。
美大出身者、特に海外の大学を出ていると、自分で手を動かしてものを作るのが当たり前なので、ものづくりと寄り添える仕事ってすごく魅力的なんですよ。ただ東京だとどうしても商品開発や仕様書作成がメインになってしまうので、産地で働くという選択肢はもともとゼロではなくて、3年前にご縁があったときも違和感なく決めていました。
例えばもし当社が岐阜以外の場所にあったとしてもおそらく入社していたと思います。
それくらい、三星毛糸という企業に魅力を感じたんです。
三星毛糸の若手社員にASK!
三星毛糸では他にも若手社員が活躍しています!今回は伊佐さんのほか、2名の方にもメッセージをいただきました。
生産管理/営業 加藤 佑馬さん
学生のころからファッション、特にスーツに興味があり、専門学校ではパターンの勉強をしていました。卒業後は別の業種へ進んだのですが、いつかやってみたいと心の奥で思っていたところ、テレビで三星毛糸の特集を見て興味を持ち、すぐに求人の問い合わせをして転職しました。
興味のあったメンズスーツの高級生地を作ってきた大先輩の方々から直接指導を受けられるのはとても刺激的で、長い歴史の中で培ってきた間違いのないものづくりは、他では経験できないことです。今年から自分の好きなブランドを手掛けられるようにもなって嬉しさでいっぱいですが、糸のこと、染色のこと、製織のこと、整理加工のこと、尾州地区のこと、ファッションのこと…まだまだ勉強が必要です。どんどん経験を積んで、お客さまに信頼される営業として成長することが今後一生掛けての目標です。
ニット生産/営業/輸出業務/織物・ニット開発 森谷 佳苗さん
高校・大学でテキスタイルについて学び、卒業後は(手織り・手紡ぎの)ホームスパンで有名な岩手・盛岡の蟻川工房で内弟子として過ごしていました。盛岡から地元に戻って次の仕事を検討していた際、大学時代の先輩から紹介を受けたことをきっかけに三星毛糸へ入社しました。
三星毛糸の130年の歴史はやはり圧倒的で、長年の技術や知識を持った方たちのそばで仕事ができることにとても魅力を感じています。他産地では難しい小ロット生産を行っているところにも、生地への強いこだわりを感じます。
- Webサイトに公開している
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三星毛糸株式会社(三星テキスタイル)
事業内容 | 衣料向け繊維素材(織物、編物)の企画・製造および自社ブランド事業の展開 |
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事業所 | 岐阜県羽島市正木町不破一色字堤外898 |
代表者 | 代表取締役社長 岩田 真吾 |
設立 | 1887年 |
従業員数 | 52名(2016年12月現在) |
資本金 | 2,000万円 |
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