アパレル企業特集
2024.08.07
ABAHOUSE、Rouge vif la cle、collexなど(株式会社アバハウスインターナショナル)
ブランド立ち上げに独立…40年を迎えたアバハウスが
社員のベンチャースピリットを重視するワケ
今年で40周年を迎える株式会社アバハウスインターナショナル。昨年には、創業社長の眞岸洋一会長から水上雄一郎さんに経営のバトンが手渡されました。今回は現社長の水上さんにインタビュー。一見時代に逆行するような「ウェット」な組織づくりや、多くの社員が仕事を兼任するスタイルなど、そのユニークな社風について伺いました。
もくじ
今回、この方にお話を伺いました!
代表取締役社長
水上 雄一郎(みずかみ ゆういちろう)さん
1995年に新卒でアバハウスインターナショナル入社。販売スタッフとしてキャリアをスタートし、店長やマネージャを経て、2017年に執行役員、2020年に取締役営業本部長に。2023年4月、現職に就任。
ジョブローテーションや兼任によって全部自分たちで手掛ける組織
まずは、アバハウスインターナショナルについて教えてください。
アバハウスインターナショナル(以下アバハウス)は、オーナーで現会長の眞岸が創業したアパレル企業で、今年3月に40周年を迎えました。メンズのものづくりからスタートしたこともあり、ものづくりに対する妥協のなさやこだわりは、創業当初から現在まで受け継がれています。
現在扱う商品は、メンズ以外にレディースや雑貨など幅広く、販路に関しても路面店やファッションビル、百貨店などさまざまです。価格帯も、20万円を超えるコートブランドから1万円アンダーのECブランドまで展開しており、このバランスのよさがアバハウスの一つの特徴と言えます。
アバハウスは「全部自分たちで手掛ける」という考えのもと、ものづくりをはじめ、販売や販促、そして物流もすべて自社で行っています。ECのシステムや基幹システムこそ外部の会社と連携していますが、それ以外は全て自分たちで担っています。 人事や総務、経理なども、ジョブローテーションの中で担当になった社員が自身の経験を活かしつつ新たに研鑽し、役割をまっとうしています。
当社はものづくりと同じだけ店舗を大切にしており、販売職を極めれば他の業務でも活躍できるという思いがあり、デザイナーやパタンナーなどの専門職を除き、本社社員の多くは販売経験者や販売との兼任です。経営陣も外部から迎え入れることなく、アバハウスを熟知した者たちが担っています。
外部の力を借りず、ジョブローテーション中心という組織は珍しいですね。
異動によるジョブローテーションだけでなく、複数の役割を兼任する社員も多くいます。たとえば販売職に軸足を置きながら、デジタル関連の仕事や人事まで兼任するケースもあります。
こういう話をすると、「大丈夫!?」という反応をいただくこともあるのですが、これこそが我々の特色であり、強みだと思っています。 縦割りの組織は、それぞれの部署や役割をつなぐところでボトルネックが発生しやすくなりますが、当社の場合、兼任する社員が多いことで異なる部署の社員同士がお互いの仕事を理解しやすくなるので、スムーズに業務を行いやすいというメリットがあります。
なぜ全部自分たちで、と考えるようになったのでしょうか?
過去には、外部の力を借りたこともあったのですが、結果的に会社の成長には繋がりませんでした。そこから、外部に頼るのではなく、社員に対価を払いながら自分たちで経験や知見を蓄積していったほうが、会社と社員のいずれもが良い形で成長していくのではないか、と考えるようになりました。
根底にあるのは、人を中心にした経営です。仕事に人を当てはめる人事ではなく、この人の強みを活かしてこんな仕事を任せてみよう、という発想です。急スピードでの組織成長には合わないかもしれませんが、長い目で見たときの社員一人ひとりの成長や、仕事のしやすさといった観点では、むしろ強みがあると思っています。
ジョブローテーションや兼任は、ご本人が希望するのでしょうか?
本人が希望するケースもありますし、会社が社員を見て適正なポジションを提示することもあります。兼任や異動を伝える段階では、「本当に自分ができるでしょうか?」と不安に思う社員もいますが、一定期間仕事をしていると、みんな成果をあげてくれます。
実は、アバハウスにはマニュアルが一切ありません。すごいでしょう(笑)。そこにはちゃんと理由があります。マニュアルで縛ると、前任者とまったく同じ仕事で同じ成果を出すだけになってしまう。でも、マニュアルがなければ自分で何とかするしかありません。もちろん前任者からの引き継ぎはちゃんとありますが、そこに自身の考えやアイデアを盛り込むことで、前例を大きく超えた成果が出ることを期待しています。どうすれば成果をあげられるか、模索するための環境をつくることで、社員が自走し、成果を出してくれるのです。
お互いの考えやコンディションが分かる「ウェット」な組織
水上さんが考えるアバハウスという組織の特徴を聞かせてください。
アバハウスはとてもウェットな組織です。ベタベタと言ってもいい(笑)。僕は社員の冠婚葬祭があれば進んで全国どこへでも行きますし、飲み会の誘いがあれば絶対に断りません。来月は販売スタッフのバーベキューがありますが、何よりも優先して行く心構えです。一時期はコロナによって我々の強みが失われてしまったのですが、それをもう一度取り戻そうと、みんなとともに過ごす時間を大切にしています。
全国各エリアを回ったときには、そのエリアのスタッフ皆とご飯やカラオケ、ボーリングなどで盛り上がります。普段も、本社で遅くまで頑張っている社員がいると、帰りにちょっと飲みながら「今日はどうだった?」と話をするのが日常茶飯事です。
なので、全国で僕が知らない社員はほとんどいないと思いますし、社員もみんな僕のことを知っています。「あの人飲んだらやばいぞ」って(笑)。
そういうことをしていくと、お互いの考え方や、コンディションが分かるようになってきます。人間誰しも、調子がいいときも悪いときもあります。密な付き合いを続けながら、適切に仕事のチャンスを作っていく、そんな会社にしたいと思っています。
僕からみんなへ何かを伝えるときも、全員を一堂に集めたり、一斉にメールを送ったりして「会社としてはこういう思いです」と言うのは簡単ですが、それだけでは思いは伝わりません。時間の許す限り、小さな単位で双方向のコミュニケーションを数多くとるようにしています。
実は独立も目指せる!“Will”が実現できる場所
アバハウスは今年で40周年の節目にあたりますが、40年を経て変わらず大切にしていることは何でしょうか?
変わらないことは、「会社は人でできている」という考え方です。これまでの話に加えるならば、顔を合わせて仕事をすることの重要性をより感じています。
コロナのタイミングで、一度在宅ワークに取り組んでみたのですが、全然うまくいきませんでした。ものづくりと小売を生業にする我々にとって、社内外を問わず「つなぐこと」がとても重要なので、顔を合わせて会話し、新しい視点やアイデアを生み出していかなければならないと再認識しました。
フル出社に戻したときには、一時的に反対意見も出ましたが(笑)、対面しながら人と人とのつながりで仕事を進めるスタンスは、今後も大切にしていきたいと考えています。
ものづくりのこだわりも変わりません。今の時代、手法の多様化によって、単にものを作るだけであれば簡単にできてしまいますが、我々は企画やパタンナー、生産を自社に置きながら、販売がこだわりを持って商品を売ることができる、ストーリーのあるものづくりにこだわっています。
逆に、変わってきたこと、変わろうとしていることは何でしょうか?
もっとも変えていきたいのは会社の若返りです。アバハウスは社員の平均年齢が41.8歳と、業界の中では高く、40年という歴史の中で、会社と社員が一緒に年を取っています。そこに若手もジョインしてもらうことで、組織バランスを取っていきたいと考えています。
特に若手に期待したいのは、デジタル領域です。3年前、20代の社員を中心にデジタルコミュニケーションのチームをつくり、OMO(※)やSNSなどの推進を担ってくれています。僕も毎週の会議に参加していますが、チームは非常に主体的で、僕自身があれこれ細かく指示をしなくても「社内の施策をもっと発信していきましょう」「新しくリーチできているお客さまがここにいます」「ここは会社の問題点だと思います」といったポジティブな議論が多数生まれています。
「アバハウスは店舗が主役。EC化率は一定を担保できればそれ以上伸ばす必要はなく、店舗とECをどう連動し、共存させていくかを考えよう。」という話をよくしているのですが、根底にある方針がちゃんと共有できているので、安心して任せることができています。
前社長の眞岸は創業者ということもあって、皆を引っ張っていくリーダーシップスタイルでしたが、僕は社員たちとフラットに接し、仕事をどんどん任せていくスタイルなので、組織のあり方も少しずつ変わってきたように思います。みんな、僕に遠慮ありませんから(笑)。
※OMO:「Online Merges with Offline」の略で、インターネット(オンライン)と実店舗(オフライン)が融合した購買体験を提供すること。
裁量があり、任せてもらえるから主体性が高まっているということでしょうか?
そうあって欲しいですね。新卒・中途に関わらず、アバハウスには「こういうことをしてみたい」という“Will”を持った社員が多いと感じますし、そういう社員が手を挙げたときに、実現できる会社でありたいと思っています。
採用説明会でも「当社は指示待ちの人は合わないと思います」と最初から言ってしまいます。僕としては、社員がどんどん進めてしまって、それを止めるくらいがいいんだと。採用面接でもまず、どんな思いがあって何がしたいのかを聞くようにしています。それに対して、思いや考えを明確に語ってくれた人には、入社してさっそくそれに取り組んでもらうこともあります。
採用時点で明快なメッセージが分かりやすくて良いですね!実際に、社員の方の思いを実現された例を伺っても良いですか?
一例ですが、関西の販売職から、東京への転勤希望が出てすぐに異動した社員がいました。その社員は映像系の仕事に興味を持ち、社員として在籍しながら学校へ通ってさまざまなスキルを習得、今では社内全ブランドの動画やYouTubeの撮影、編集まで担っています。
また、OEM企業からアバハウスに中途入社した生産管理の社員は、当初から自分のブランドを作りたいという強い思いがありました。スキルも申し分なかったので、まだ入社して2年も経っていませんが、間もなく彼女がつくったブランドがローンチされます。
ほかにも、デジタル分野で成果を上げているある社員が「培った経験をもとに自分でディレクションしてみたい」と声を上げ、自身のブランド立ち上げにチャレンジします。
当社ではこういうことが自然発生的に生まれてくる。みんな、良いものを作ってお客さまに届けたいという思いに真剣なんです。彼らの姿を見ていると、ものづくりを大切にしてきて良かったと思いますね。今すごく面白いです。
一定規模の会社になると、そこまでの自由度はないので驚きました!ブランドを立ち上げるにしても、組織的に進めるのが一般的だと思います。
コロナを経て、昨年からギアを入れて攻めに転じられるようになったので、色んなチャレンジがしやすくなりました。そうした社員たちの活躍は、ほかの社員にも刺激になっているんじゃないかと思います。
ブランド立ち上げのほかにも、当社のOBが独立して販売代行の会社を立ち上げ、東京・京阪神エリア以外の店舗運営にあたってくれています。年に1回の決算報告をはじめ、採用やスタッフ育成・評価、各エリアにアジャストさせるためのショップMDなども担い、本社と打ち合わせを重ねています。
また、物流を担当する社員から「アバハウス以外の物流も受けられる組織力になっているので独立を視野に勉強してみたい」という話が挙がっていたりもします。
さまざまな形で自分たちの夢を実現していって欲しいと思っています。
ルール、マニュアル、上下関係のない自由な環境
会社としてこれからチャレンジしていきたいことを教えてください。
一つは、10万円以上の価格帯のものづくりです。今、日本のマーケットは安価な商品とラグジュアリーに二極化していて、その間が空洞化していると感じます。特に外資ラグジュアリーブランドの躍進には目を見張るものがあり、百貨店のファッションフロアは今や、ラグジュアリーが中心になっています。しかしそれも長く続くものだとは思えません。近い将来、我々が得意とする10万〜20万円の商品の需要が拡大していくと見込んでおり、その時に向けてメンズ、レディースともに準備を進めています。
もう一つは、“一人ワンブランド”の推進です。ブランドを立ち上げたい社員たちが年間5億円規模のブランドを生み育て、それが増えていけば売上拡大に繋がります。ECを販路にすることで利益率上げる、そのぶん高価格帯ブランドに適切な投資する。そうしたサイクルを生み出すことで、アバハウスとして良いものづくりを続けていきたいです。
最後に、入社を考える方に向けたメッセージをお願いします!
アバハウスは、ガチガチのルールやマニュアルは苦手、上下関係は嫌い、自分で色んなことを判断しながらフットワーク軽く動きたい、人が好きでコミュニケーションを重ねながら良い仕事がしたい、そんな人が働きやすい会社だと思います。
売上や会社の規模を極端に大きくしていこうとは考えていません。僕が社員全員の顔も、名前も、性格も家族構成も分かっているくらいの規模が、アバハウスにとって「ちょうどいい」と感じています。そういうウェットな関係の中で、独立志向、ベンチャー気質のある人に来てもらいたいです。みなさんには入社したばかりのモチベーションや勢いをいかんなく発揮していただきたいと期待しています。ぜひお待ちしています!
ABAHOUSE、Rouge vif la cle、collexなど(株式会社アバハウスインターナショナル)
事業内容 | メンズ・レディスウェア及び服飾雑貨の企画、製造、卸・小売業 |
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事業所 | 本社:東京都渋谷区東1-26-20 |
設立 | 1986年2月28日 |
代表者 | 代表取締役社長 水上 雄一郎 |
従業員数 | 555名(2024年8月現在) |
資本金 | 4,900万円 |
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