アパレル企業特集
2017.04.18
SHIPS(株式会社シップス)
ITのチカラで社員が働きやすい環境づくりを
シップスがRFIDで実現した業務改善とは?
近年、“FashionTech(ファッションテック)”という言葉を耳にする機会が増えました。
従来のファッションビジネスを、ITやテクノロジーの力でより良い形に成長させていくというもので、Webサービスやアプリケーション、また業務システムといったところでさまざまな改革が進められています。
今回は、深刻な人材不足に悩む販売現場において、「ITのチカラでスタッフの負担を減らし、より良い業務環境を実現したい」という思いでRFIDを導入した株式会社シップスにインタビュー。営業推進本部 本部長と情報システム部を兼務する大塚さんと、実際にRFIDを日々の業務に活用している銀座店 店長の栗田さんにお話を伺いました。
今回、この方にお話を伺いました!
営業推進本部 本部長 / デジタルマーケティング部・CS部・情報システム部
大塚 祐史さん
2000年シップス入社。
情報システム部を経て、現職に従事。店舗スタッフをはじめ、商品管理にかかわるすべてのスタッフの業務改善に繋げるため、RFIDタグの導入を進めている。次フェーズとして、自社の物流部門への導入を計画中。
SHIPS 銀座店 店長
栗田 泰教さん
販売スタッフでのアルバイトを経て、2000年新卒としてシップス入社。
入社後一貫して販売職に従事し、現在は銀座店の店長をつとめる。
理論上、1/10の時間で商品管理を行うことができるという「RFID」とは?
ではさっそくですが、RFIDについて簡単に教えていただけますでしょうか。
大塚:RFIDとは、電波を使ってID情報の埋め込まれたタグを読み取るというものです。 一般的に、商品にはバーコードタグが付与されていて、レーザーなどでタグを1枚ずつ読み取ることで商品管理やレジ対応を行っていますが、当社の商品に付いているタグにはRFIDのICチップが埋め込まれていて、電波の届く範囲であれば複数のタグを直接触れることなく一気に読み取ることができます。
確かに、よく見るとうっすらとチップのようなものが埋め込まれていますね。バーコードとは具体的にどのような違いがあるのですか?
大塚:たとえば10枚の商品があったとして、バーコードの場合は1枚ずつリーダーで読み込むので、洋服の中に入り込んでいるタグを取り出してバーコードをピッと読み取る作業を10回行う必要があります。RFIDの場合はタグのついた商品のあたりにリーダーをさっとかざすだけで、すべて一気に読み取ることができます。かざす時間は数秒程度で十分なので、理論上は1/10の時間で済みます。これが一番大きな違いです。
なるほど、これはすごいですね!商品数が多ければ多いほど、時間の短縮に繋がるというわけですね。
大塚:読み取りのスピードともうひとつ大きなポイントは、「読み取りの重複がなくなる」という点です。
棚卸で膨大な商品を管理する際、1枚ずつバーコードで読み取っていると、どこまで読み取ったか分からなくなってしまうことってありますよね。こうしたヒューマンエラーも商品管理における悩みのひとつでしたが、RFIDはタグ1枚1枚に固有の情報が入っていて、それをもとに管理できるため、重複して読み取ってしまう心配がありません。
お伺いすればするほど、魔法の道具のように感じます!が、逆に何か課題はあるのでしょうか?
大塚:データの読み取りを電波で行うので、「かざすだけで広範囲にあるタグが一度に読み取れる」ということは、関係ないタグを読み取ってしまうというリスクもあります。電波は反射する性質があるので、広範囲かつ大量の商品を読み取る場合なら良いのですが、他の店舗に在庫を動かす際に特定の商品だけ読み取りたい場合には不便なわけです。これは実際に店舗からも声が挙がってきていて、電波の強度を調整することでバランスよく使ってもらえるよう、見直しているところです。
迅速な意思決定により、予定より5年前倒しでの導入に成功
そもそも、RFID導入のきっかけは何だったんでしょうか?
大塚:店舗における人材不足は深刻で、もちろん人員補充のための採用は行っていましたが、それと並行して店舗における業務改善も大きな課題となっていたので、RFIDは10年以上前から注目していました。ただ当時はタグが1枚約500円と高価で実用性に欠けたため様子見が続いていて。しばらく経った2011年ごろ、タグ1枚20円ほどまで安価になったのをきっかけに「2018年テスト導入」という目標を設けました。
次に話が動いたのは2013年、「SHIPS Days」というライフスタイルに特化した新業態を立ち上げるタイミングでした。
RFIDタグは全ての商品についていないと意味がなく、「SHIPS」の既存店に導入するためには、バーコードタグからRFIDタグに入れ替えるための膨大な労力とコストが掛かることがネックになっていました。しかしすべてゼロから始める新業態であれば、「タグの入れ替え」という作業が発生することなく導入できるんじゃないか?と考えたんです。
これは大チャンスですね!ただ、予定より5年も前倒しですが、どのように進めたのですか?
大塚:まずRFIDの専業ベンダーさんたちに集まっていただいて、「新ブランドのタイミングでトライアル導入したい。ここで何とも成功させて、本格導入につなげたい」という話をしました。
ベンダーの皆さんも、実績を作りたいという思いを持っていらっしゃったので非常に協力的で、かなり好条件でトライアルできる見通しが立ち、急いで社内向けの計画書を作って経営層に向けたプレゼンを行いました。そうして2014年3月、ららぽーとTOKYO BAYにオープンする「SHIPS Days」1号店で、RFIDのトライアルを開始したのです。
短期間で初めての取り組み、ということで大変なことも多かったのではないでしょうか。
大塚:まずは僕たちが「RFIDって何?」というところをちゃんと理解して、どのようにシステムを設計し、導入すれば店舗スタッフのみなさんが快適に使ってくれるか、という部分が一番苦労しました。ただせっかくのトライアル期間なので、実際に使ってみて初めて分かることもある!と、ある程度は大胆に切り込んでいって、店舗からのフィードバックを集めて改善する、という形で進めました。
そこでの結果をもとに、本格導入へと踏み出したんですね。
大塚:はい。一定の効果が得られたことで2015年1月、「SHIPS」全店での導入が決まったのですが、そこで考えないといけないのが、先ほどもお話したとおり「どうやってバーコードタグをRFIDタグに付け替えるか」でした。ただでさえ人材不足の中、店舗スタッフに「バーコードタグからRFIDタグに差し替えてください」と簡単に頼むことはできません。悩んだ結果、RFIDタグ運用をスタートする前にタグだけ導入することにしました。
なるほど!でもこれはかなりのコストが掛かりますね…。
大塚:2015年9月以降に出荷する商品はすべてRFIDタグに切り替えて、2016年5月のスタートまで、半年以上の間、何も活用されないRFIDタグを発行し続けたわけです。いわゆる先行投資となりましたが、コストと労力、効率面のバランスを鑑みて判断しました。結果として、スタート時点で90%ほどの商品のタグを入れ替えることができました。
結果だけを聞くとスムーズに進んでいるように見受けられますが、壁を乗り越えるための柔軟なアイデアと大きな決断があったのですね。
大塚:「使わないけどRFIDタグを先に発行したい!」と言うだけなら簡単ですが、これだけ大規模な投資計画を進める上では、経営層の意思決定が必要です。そんな中、前向きな決断を下してくれたことは本当にありがたかったです。
よい形でトライアルができたというのもありますが、もともとの目的として掲げている「スタッフの業務負担減」「店舗内の業務改善」という点をしっかり共有できていたことが大きかったと思います。当社はもともと小売からスタートした企業なので、店舗に重きを置くという考えは昔から根付いているんです。
何より、販売職の一番の魅力である「接客」に集中できるようになった
栗田さんはRFIDを使う側の立場にいらっしゃいますが、昨年導入されて実際のところいかがでしたか?
栗田:正直なところこういう本社から提案される取り組みって、本社側からの思いだけが強くて現場は逆に大変…ということもあったりするんですが(笑)、このRFIDに関しては、かなり浸透が早かったです。
何が違ったのでしょうか?
栗田:使ってみてすぐに「あ、これはベンリだな」というのがすぐに体感できたことですね。 もちろん、新しい機械が入ったので、操作を覚えるという点で多少の時間は必要でしたが、慣れてしまえば、接客の流れの中でものすごく効率化されていきました。
店舗のどの業務においてどういった効率化ができたのか、具体的に教えていただけますか?
栗田:店舗の業務はお客さまへの接客やお会計に伴うレジ操作などがメインですが、それ以外に、店舗間の商品移動の手続きや棚卸など、いわゆるバックヤードの業務もたくさんあります。近年はECサイトへの商品移動も増えていて、接客以外の業務負担は大きなものとなっていたので、RFIDの導入は本当にありがたく、業務時間の大幅削減に繋がりました。
特に棚卸となると全員で朝から深夜まで、店舗によっては1万から1万5000点もの商品在庫を1点1点追っていくという一大イベントだったのですが、今や当日中に担当者1~2名がハンディターミナルをかざしながら店舗をうろうろするだけで終わりです。とんでもなく画期的ですよね。
何かしら接客業の経験がある方にとっては、棚卸の大変さは身に染みて分かると思います。
栗田:はい、本当に助かっています。
また、お客さまに直接関わるところでは、レジに費やす時間の短縮も大きいです。
これまでは、商品からタグを取り出して切り取り、バーコードを読み取るという作業を1点1点行っていましたが、今では専用のスキャナにまとめて商品をかざすだけで読み取ることができるので、お客さまをお待たせする時間が大幅に削減できました。セールでは、たとえばこれまで3名で対応していたレジが1名でまかなえるくらいの改善がみられ、店舗の人員不足という慢性的な悩みも軽減されています。
そうしたバックヤードの業務やオペレーション業務が軽減されると何が良いかというと、もちろん単純に負担が減ってラクになったというのもあるのですが、何よりお客さまへの接客に多くの時間を取れるようになったのが一番ありがたいです。
現在、ECサイトの売上がどんどん拡大していく中で、店舗の一番の魅力って“プロの方々からの接客を受けられること”だと思うので、スタッフの方々がそこに集中できるというのは、店舗の価値を高めることに繋がるのかなと感じます。
栗田:そのとおりで、ECサイトと店舗との最大の差別ポイントは“接客サービス”だと僕も考えています。
こういう新しいシステムを導入する際って、「どれだけ業務改善されたか」という数字の部分がクローズアップされやすいのですが、僕の素直な思いとしては、時間に余裕が生まれて接客に集中できることが、RFID導入の最大のメリットだと考えています。
こういうところは改善されるといいな、などリクエストはありますか?
栗田:先ほども話に挙がった電波の強さや、ハンディターミナルの画面の操作性などは店舗からの声として伝えていて、少しずつ改善されているのがありがたいです。
逆に大塚からリクエストされているのは「とにかくどんどん使ってくれ!」ということですね。
やっぱり使わないと慣れないですし、使いこなして初めてそのシステムが活かされるので、導入直後はちょっと大変でしたけど、意識して使うようにしました。
大塚:先ほど「まるで魔法の道具のよう」という話が出ましたよね。僕もそう思っていたんですが、決してそうではないことに運用してみて気付きました。
どんなに便利なシステムでも使わないと意味がなく、使うスタッフの理解が必要なんです。やっぱり新しいモノへの積極性や、機械操作の得意・不得意にはどうしても個人差があるので、積極的に使っている店舗とそうでない店舗の差が出てしまいます。なので、店長会などを通じてRFIDの利便性を理解してもらえるように働きかけ、より一層の稼働率を上げていくことで、今後さらなる業務改善につながると考えています。
栗田:僕も20年近く店舗一筋で、棚卸なんて大変なのが当たり前だと思ってやってきましたから、さっとかざすだけで終わってしまうのが信じられない気持ちは分からなくもないんです。アルバイトスタッフがささっと終わらせて「え?本当に大丈夫なの?」って(笑)。でもやっぱり時代が変わって、ECの成長や、人材不足や、ワークライフバランスといった背景がある中で、機械に任せられるところは任せて自分たちにしかできないスキルを高めていく、というのが大事なんですよね。
洋服が好きな人、既成概念にとらわれず違う価値を創っていける人
では最後に、店舗の第一線でブランドを体現する栗田さんと、そんな店舗の方々を支える大塚さんから一言ずつ、こんな人と働きたい!という思いをお聞かせください。
栗田:販売職という仕事は付帯業務が本当に多く、アパレル業界に飛び込んできた若いスタッフが、接客以外の仕事が思った以上に多くて「思っていたのと違った…」と去っていく姿をこれまで何度も見てきました。
当社では、RFIDの力を借りることで接客に集中できる環境が整ってきているところなので、「洋服が好き!」「接客って楽しい!」という純粋な気持ちを再確認できるのではないかと思います。
ぜひ、その思いを当社で存分に発揮いただけると嬉しいです。
大塚:会社から与えられたミッションをしっかりとこなすことは大前提ですが、それに加えて、既成概念にとらわれず、極端な言い方をすればこれまでの常識を壊してでも能動的にクリエイションできることが、これから絶対的に必要になってきます。
もうひとつは栗田からもありましたが、やっぱり洋服が大好きな人であって欲しいです。今は情報があふれていてモノの同質化が止まらず、「ブランド」自体をアピールするこれまでの商売の形のままだと難しくなっています。しかしそんな中でも洋服への愛情を忘れずに別の意味での差別化、違う価値を創っていくことに興味を持てる方と、一緒に楽しく仕事ができると嬉しいです。
- Webサイトに公開している
求人・企業情報はほんの一部です。
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SHIPS(株式会社シップス)
事業内容 | メンズ・ウィメンズ・キッズウエアと服飾関連商品の小売販売及び企画・製作 |
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事業所 | 本社:東京都中央区銀座1-20-15 |
代表者 | 代表取締役社長 三浦 義哲 |
設立 | 1975年 |
従業員数 | 1235名(2017年1月現在) |
資本金 | 6,000万円 |