アパレル企業特集
2017.08.01
RUNWAY channel(MARK STYLER株式会社)
MARK STYLERの自社ECサイト「RUNWAY channel」
EC化率33%の成長に迫る
2011年に自社ECサイト「RUNWAY channel」を立ち上げ、約6年でEC化率33%にまで成長させたMARK STYLER。今回は、取締役 経営戦略本部 本部長の武田さんと、EC本部 本部長の北島さんに、MARK STYLERのEC事業についてお伺いしてきました。
「ブランドのファンの方々により一層ご満足いただく」「新しいファンを増やす」
根底にあるのはシンプルな思い
まずは自社ECサイト「RUNWAY channel」についてお伺いできますか?
北島:「RUNWAY channel」はMARK STYLERの全17ブランドの商品が購入できる、自社運営のECサイトです。
MARK STYLERのブランドにはそれぞれに個性があり、スタッフの情報発信やコーディネート提案の影響力が非常に大きいのが特徴で、twitterとInstagramを合わせると470万フォロワー、ブログは月間合計1000万PVを超えるアクセスがあります。非常に多くのファンの方に支えていただいており、その方々に対してアプローチできることが大きな強みです。2016年度のEC全体の売上は103億円、2020年度には170億円を目指しています。
武田:現在、MARK STYLERのアイテムは、店舗をはじめ「RUNWAY channel」や外部のモール型ECサイト(以下、外部サイト)など、さまざまなチャネルで購入することができます。お客さまの購入しやすいところでお買い物を楽しんでいただくのが一番だというのが大前提ではありますが、ECに限って言うとコアなファンの方であるほど「RUNWAY channel」で一番楽しんでいただける環境を作りたいというのが我々の思いです。
北島:たとえば、「RUNWAY channel」でしか買えない商品があったり、最速先行販売を「RUNWAY channel」で行ったり、「RUNWAY channel」でしか手に入らない情報があったり、といった“特別感”は、外部サイトでは体験することができません。どこで買っていただくこともできますが、ブランドのファンになればなるほど「RUNWAY channel」を楽しんでいただけると思います。
アパレル業界では今、どの企業もEC強化し、EC化率を高めようと取り組んでいますが、MARK STYLERはなぜ33%という驚異的な数値を出すことができているのでしょうか?
武田:シンプルに、スタートが早かったからではないでしょうか。
EC事業をスタートする際、多くのアパレル企業はまず外部サイトでスモールスタートすることが多かったように感じていますが、当社は自社サイトでブランドの魅力を発信していくことにこだわり、「RUNWAY channel」を構築しました。大変でしたが、会員情報を蓄積し、分析を重ね、育てる時間をしっかり取れたことが現在の結果に繋がっているのだと思います。
なるほど。スタートが早かったというのは大きな強みですね。先ほどの中期経営計画上の予算を見ると今後の成長にも期待がかかりますが、どのような成長戦略をお考えですか?
北島:直近では、多様化するお客さまのニーズに合わせて、いかにタッチポイントを増やすかに注力しています。現在は当社からお客さまに対し一方的に情報発信している施策がほとんどですが、今後はOne to Oneでお客さまお一人おひとりに合わせたアプローチができるようにしていきたいです。
もうひとつ大きなところでは、「RUNWAY channel」の大幅リニューアルを進めています。
それは楽しみですね!リニューアルのポイントを可能な範囲でお伺いできますか?
北島:ブランドの公式サイトと「RUNWAY channel」をストレスフリーで行き来でき、迷わず欲しいものが手に入るインターフェイス・デザインの見直しをはじめ、在庫連携や配送サービス、購買データの店舗連動などといったシステム面も大幅に改修します。店舗と「RUNWAY channel」、どこで購入しても同じMARK STYLERとしてのサービスをご提供できる仕組みを整えていきたいです。サービスの仕組みや概念、ITトレンドがどんどん進化していく中で、変化にきちんと対応できるような柔軟な環境を構築することが理想ですね。
武田:根底にあるのは「ブランドのファンの方々により一層ご満足いただく」「新しいファンを増やす」の2つ。そのためには、毎日訪れたくなるようなサイト作りが必要です。昨今、ファッション業界全体が画一化されてしまっているといった話もありますが、我々MARK STYLERはどのブランドも独自性のあるものづくりを行っていますので、その魅力をしっかり伝えられるサイトにしていかなければなりません。
そのためには、各ブランドとの密な連携はもちろんのこと、何よりお客さまとのコミュニケーションが非常に重要です。先ほど北島が話していたように、One to Oneで双方向にコミュニケーションが取れるような仕組みはできるだけ早い段階で取り入れていきたいですね。
新しいファンを増やすという意味では、外部サイトとの取り組みが大きな役割を果たすのではないかと思います。
北島:外部サイトでたまたま購入して気に入った商品がMARK STYLERのものだった。それをきっかけにブランドのファンになった―― そんな声を本当に多くいただいています。外部サイトがPRとしての役割も果たしているので、外部サイトのキャンペーンなどには積極的に参加し、それをきっかけに興味を持ってくださったお客さまに「RUNWAY channel」でも楽しんでいただくための導線づくりを常に意識しています。事実、ある外部サイトとの取り組みによって、そこでの売上だけでなく「RUNWAY channel」の売上も併せて上がったという実績も出ており、今後はさらに外部サイトとの連携を密にしていきたいと考えています。
フラットで落ち着いた雰囲気の中、各自の専門性を高めていく組織
越境ECの強化に向けた体制づくりも視野に
続いて、EC本部の体制についてお聞かせください。
北島:EC本部がサイト全体を管理し、ブランドごとに1名いるEC担当者と連携しながら「RUNWAY channel」や外部サイトを運営しています。EC本部は約50名の組織で、大きく制作、撮影、商品登録などのオペレーション、分析、営業・販促に分かれて、それぞれの専門性を発揮しながらストイックに仕事を進めています。
ブランドのEC担当者とEC本部の役割の違いは何ですか?
北島:ブランドのEC担当者はあくまでそのブランドの売上を伸ばすための販促やSNSの運営などを行う立場です。僕たちは「RUNWAY channel」全体のサイト運営や仕掛け、施策のプランニング、分析、システムの管理などを行っています。
EC本部の雰囲気はどのような感じでしょうか?
北島:平均年齢が全体と比べて少し高く、落ち着いた雰囲気です。上下関係もないのでラフに意見交換しながら仕事をしていて、アパレルというよりもIT業界の雰囲気が近いかもしれません。中途入社のスタッフがほとんどなのですが、実はアパレル出身者は少なく、IT業界から「好きなブランドに関わりたくて」「アパレルの中ではMARK STYLERがECに強いと聞いて」「自分の専門性を活かせると感じて」と転職してきたスタッフが多いです。
越境ECについてもEC本部の中で進めているのでしょうか?
北島:はい、そうです。現状はEC本部の中でプロジェクト的な位置づけで運営していており、中国の「天猫(Tmall)」と「豌豆(ワンドウ)」に出店し、いろいろトライ&エラーを繰り返しながら進めています。リアル店舗と比べるとローコスト・ローリスクで出店できるので、越境ECでの経験をリアル店舗にも役立てていきたいです。
武田:どうすればMARK STYLERの魅力をアピールして中国のマーケットで結果を出せるかですよね。基本は日本での成功体験を横展開していますが、やはり日本と中国のファッションマーケットには様々な違いがあります。たとえばECサイト上でセールなどのイベントを実施した場合、日本ではセール初日にもっともユーザーが動くのですが、中国のユーザーは先に欲しい商品をカートに入れておくため、セールの2~3日前にピークが訪れます。
そうした傾向は実際に取り組んでみないと分からないので、越境ECを強化するための体制作りは今後の課題ですね。
越境EC専門のチーム作りも視野に入れているということでしょうか。
武田:そうですね。近い将来、専門の体制は必要になってくるはずです。
アパレル業界においてEC領域がまだまだ未成熟だった2011年、我々は「RUNWAY channel」を立ち上げて自力でここまで切り開いてきました。越境ECも同様に、経験を重ねながら一歩ずつ成長していくことが大事だと思う反面、近年のECやテクノロジーを取り巻く変化のスピードを鑑みると、もう少し効率的に進めたいという思いも本音としてはあります。
今後さらにスピード感を求めていく上で、中国のマーケット、特にEC領域に強い方がいらっしゃると心強いです。
お客さま目線を持った上でアイデアを形にしていく
MARK STYLERのEC本部における求める人物像についてお聞かせください。
北島:スキル面は組織状況やタイミングによって変わってきますが、共通するマインドとして、“お客さま目線を持っている”ことを重視しています。もう少し具体的に言うと、アパレルでの接客経験のある方に期待したいです。
現在のEC本部はWebの専門性が高い一方で、アパレル経験者ならではのお客さま目線が少し弱いという課題があります。アパレルでの経験や知識、感度があれば、今以上にブランドの担当者と同じ目線で話ができるはず。ショップの接客とECサイトの接客はどんどん境界線がなくなってきているので、ECサイトにおいても店舗と同じようにお客さまに寄り添いながらアイデアを形にしていける組織を目指していきたいです。
MARK STYLER株式会社
事業内容 | オリジナルブランドによる婦人服・服飾雑貨の企画開発、 直営店での小売ならびにフランチャイズ店、専門店等への卸売 自社運営eコマースサイト「RUNWAY channel」および 他社運営eコマースサイトを利用した商品のインターネット販売 |
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事業所 | 本社:東京都渋谷区広尾5-8-14 |
設立 | 2005年11月 |
代表者 | 代表取締役社長 秋山正則 |
従業員数 | 1,191名 ※正社員:755名(2017年2月末現在) |
資本金 | 1億円 |
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