アパレル企業特集
2017.11.17
株式会社横浜DeNAベイスターズ
大手アパレルMDからプロ野球チームのグッズMDへ
ここでしか得られないやりがい、そして感動とは
アパレル業界でのものづくりは、同じアパレル業界の中でキャリアを積んでいく。 一般的にはそう考える方が多いと思いますが、アパレルでの経験を活かして異業界へチャレンジする方々もいます。今回は、クライマックスシリーズ・日本シリーズでの激闘も記憶に新しい横浜DeNAベイスターズで、グッズのMD企画リーダーとして活躍する山中勝美さんにインタビュー。アパレルとの共通点や違い、やりがいなどについてお伺いしてきました。
横浜DeNAベイスターズの野球を楽しむためのコミュニケーションツール
もともとは大手アパレルのMDだったという山中さん。異業界である横浜DeNAベイスターズへ転職されたきっかけや決め手は何だったのでしょうか?
きっかけは2016年のリオオリンピックでした。決してアパレルが嫌だったわけではないのですが、2020年には東京でオリンピックが開催されるというタイミングで、スポーツビジネスへの興味が湧いてきたんです。日本だとプロ野球のマーケット規模が圧倒的で、携わるならプロ野球だと思っていたところ、幸運なことに横浜DeNAベイスターズの求人と出会い、グッズMDであれば自身のスキルも活かせそうだと感じて応募しました。2017年1月より現職で働いています。
入社後は、やはりウェアを中心に担当されているのでしょうか?
入社当初は、これまでの経験を活かしてウェアやアクセサリーを中心に担当していましたが、今は応援グッズからノベルティまで幅広いアイテムの企画に携わっています。ものづくりにおいて「品質」「納期」「コスト」をコントロールするという点では同じなので、扱う商材が拡大したことについてのストレスはまったくありません。
ものづくりとして共通する部分があるのですね。逆に、これまでと勝手が違うなと感じたことはありますか?
いろいろありますが一番大きな違いは、“お客さまはお買い物ではなく、野球を観に来ている”ということです。
「モノ」としてのクオリティがどれだけ高くても、それが商品の評価に直結するわけではありません。グッズを買うことで応援がますます楽しくなる、球場に一体感が生まれる、チームへの愛着が増す、そういったものが価値のあるものなんです。また、一般小売のように他ブランドと比較して選べるわけではなく、私たちがご提供するグッズがすべてなので、定番アイテムはもちろんのこと、お客さまにとって「これまで見たことのないもの」「欲しかったけどなかったもの」を生み出していかなければなりません。その感覚はこれまでと大きく違いますね。
もうひとつはものづくりのリードタイムで、常に新しい商品を出していくため、1か月~2か月先の商品をずっと作り続けるようなペースで進めています。今年はクライマックスシリーズや日本シリーズもありましたので、急きょ作るアイテムも多かったです。
なるほど、ものづくりとしては共通でも、企画の考え方そのものやリードタイムは大きく違うのですね。企画はどのようなところから生まれるのでしょうか?
ブランディングに関わるロゴやマスターデザインはクリエイティブ戦略部が担当していて、そのデザインが出てきた状態で、どういう商品に落とし込んでいくか、社内のメンバーと話をしながら考えています。グッズは、ファンのみなさんが持つことで一体感を生み出すコミュニケーションツールです。なので、グッズ単体というよりも、球団の動きとともに企画を考えます。
シーズン中は社内で「スペシャルイベント」と呼ばれる球団施策があって、「夏祭りイベント」「来場者にユニフォーム無料配布」「球場に泊まれる企画」などといったイベントと連動させてグッズを考えますし、ポストシーズンと呼ばれるクライマックスシリーズや日本シリーズに向けた商品も作ります。
またシーズンオフも、クリスマスやバレンタインといった季節イベントと連動した企画があったり、1月の新人合同自主トレ、2月の春季キャンプ、3月のオープン戦といったイベントに向けてのグッズ作りがあったりと盛りだくさん。プロ野球の実質的なオフシーズンはとても短くて、入社して驚いたことのひとつでした。
横浜DeNAベイスターズはコラボ商品もたくさんありますよね。
そうなんです。単にメーカーさんと組んだ商品を作るだけでなく、様々なアーティストさんとのコラボもあります。
たとえば2017年はチームスローガンをモチーフに楽曲を作ってくださった横浜出身のアーティストさんと組んで、横浜のディティールを取り入れたグッズを作ったり、新潟で試合開催をした際には、ご当地アイドルのみなさんとコラボをしたりといったことを仕掛けました。
さまざまな業界経験者とともに「これまでになかった」自由なものづくりができる
MD部の体制について教えてください。
MD部は17名、開発系のMD企画グループと、販売系の販売・営業グループがあります。
MD企画グループでは企画から生産管理、品質管理など、販売・営業グループではロジスティクス、ディストリビューション、店舗販売、EC、営業などの仕事があり、ある程度の役割分担はありつつも基本的には兼業しながら全員で進めています。
長く野球界のグッズに携わってきたメンバーもいれば、私のように異業界からのメンバーもいて、それぞれが積み上げてきたキャリアや経験を活かし、意見交換を重ねながらシナジーを生み出すような関係性ができています。
異業界ではたとえばどんな業界からの方がいらっしゃいますか?
私と同じアパレル出身もいますし、コンサルティングやメーカーなど、本当に幅広いです。
得意分野はそれぞれありますが、ここで一緒に働く以上、お客さまに満足していただく商品をご提供すること、売上を最大化すること、という目標は同じです。プロセスが違うだけで同じゴールに向かっているという共通言語があり、自分にこれまでなかった価値観や考えを共有できるのは面白いですね。
オフィスの雰囲気はいかがでしょうか?やはり野球ファンが多いのでしょうか?
よくある表現にはなりますが、年齢もキャリアも関係なく、明るくて風通しが良い雰囲気です。
基本的にみんなスポーツ好きという共通点があり、横浜DeNAベイスターズだけでなく、他のスポーツのファンまでバラエティに富んでいます。実は私もスポーツビジネスとしてのプロ野球に魅力を感じてこの世界に飛び込みましたが、趣味としてよく観ているのは海外サッカーやテニスで、入社するまで野球のことは詳しくなかったんですよ(笑)。
そうだったのですね!そんな山中さんがプロ野球の世界に飛び込んでみて、実際どんなところにおもしろさを感じていらっしゃいますか?
何でも作れることですね。 私たちの仕事は、横浜DeNAベイスターズというブランドを作ることなので、そのためであれば何を作っても良くて、車でも不動産でもいいんです。レディースブランドだからレディースの洋服を作る、といった枠がない自由さは、アパレルでは得られなかったおもしろさです。ちょうど今も来年に向けた企画を進めていて、これまでになかった商品をお客さまが購入しやすい価格でお届けできるよう、試行錯誤している最中です。
確かに「20代女性」「30代男性」のような狭いターゲットではないという意味でも自由度はとても高いですね。
私たちのターゲットは横浜DeNAベイスターズのファンの方々全員ですが、それとは別にビジネスとしてのコアターゲットとして「アクティブサラリーマン」を置いています。1998年の優勝を知っている30代で、仕事帰りに同僚たちと、週末にご家族と足を運んでいただくというイメージです。ただ近年は働く女性たちやお子さんがいらっしゃる主婦の方々など、ファン層が拡大しているため、グッズも男性向けのカッコイイものだけでなく、ご家族で楽しめるもの、お子さんが喜ぶキャラクターグッズなど、老若男女に向けて企画しています。
スタジアムに足を運ぶすべてのお客さまの“感動”をお手伝いする仕事
山中さんにとっての仕事のやりがいを聞かせてください。
企画から店頭に並ぶまでのリードタイムが短いという話をしましたが、販売してからの初速もとても早く、すぐにリアクションがあります。1試合3万人ものお客さまが来場し、購入したグッズをその場で身に付けてスタジアムで応援している様を見ると、これまでに味わったことがないくらいドキドキします!
InstagramやtwitterなどのSNSでもハッシュタグとともにどんどんアップ、拡散されていって、自分たちが生み出しているものの影響力の大きさを感じています。もちろん、それだけの反応があるということはプレッシャーでもあるのですが、ものすごいやりがいを感じます。
普段からスタジアムに足を運んでいるのですか?
はい、横浜スタジアムで試合がある日はできるだけ足を運んでいます。こういう天候や対戦相手だとお客さまはこんな反応なんだな、仕事帰りかな、誰と来ているのかな、などといったことを自分の目で見て、肌で感じて、それをもとにまた次の企画に繋げていきます。場合によっては、そこで得たインスピレーションをすぐ形にするため、すぐにオフィスに戻って企画に起こしたりもしています。
今シーズン、山中さんが企画した中で思い出深いグッズはありますか?
実はそれが「洋服」ではなくて、「ラムネ」なんです(笑)。
横浜DeNAベイスターズではオリジナルのクラフトビールを発売しているのですが、もっと幅広くお酒が飲めない方やお子さんも楽しんでいただけるようなものが欲しくて、地元である関内の飲料メーカーさんとオリジナルの「ベイスターズラムネ」を開発しました。球場内はビンが持ち込めないので容器はペットボトルにしよう、パッケージはお子さんに喜んでもらえるようなものがいいよね、キッチンカーを数か所に配置して球場全体で売り出そう、と準備していざ発売したところ、予想通りものすごくお客さまに喜んでいただけたんです。
次第に近所のコンビニや横浜駅の百貨店などから「うちでも取扱いさせて欲しい」というご要望をいただくようになり、スタジアムで飲むだけでなく、お土産としても楽しんでいただくことができました。
卸にまで発展するというのはすごいですね。どれくらい売れたのですか?
6月から企画を始めて8月から売り出したところ、想定をはるかに上回る反響をいただき、急きょ増産することになりました。もっと売上金額の高かったグッズは他にもありましたが、“これまでになかったもの”をゼロから企画して、大勢のお客さまがラムネを手に野球観戦してくださって、スタジアム以外でも販売していただけて、その影響力を考えるとやっぱりベイスターズラムネが一番思い出深いですね。
自分たちは、ファンの方々の“感動”をお手伝いをしているんだな、と実感することができました。
山中さんはもともとアパレル出身で、入社時はそこを強みに頑張ろうという思いがあったのではないかと思うのですが、色々お話を伺うと、もっと広い考えで仕事をされていると感じました。どこかで、ご自身の仕事の仕方や考えを変えるようなきっかけがあったのでしょうか?
仰る通りで、はじめは洋服を作ってきた経験を活かせるよう、という思いがありました。
ただ実際に入社してスタジアムに足を運んでみたら、“アパレル”というのは、野球を楽しむためのひとつでしかないということが一瞬で分かりました。スタジアムの空気を肌で感じれば、自分の得意分野はこれ、といった狭い話ではなく、「このスタジアムに足を運んでくださった3万人のお客さまのために自分ができることって何だろう?」「今足りないことって何だろう?」という考えに自然とたどり着くことができたんです。
今後チャレンジしていきたいことなどについてお聞かせください。
今シーズンは約200万人のお客さまがスタジアムに足を運んでくださったのですが、その一人一人が自分たちの企画したアイテムを持って泣いたり笑ったりしている…そんな200万人の「感動」に寄り添える小売はそうそうありません。それだけの方々に対して私たちができることはまだまだあります。
これまでになかったようなアイテムの企画と価格帯の見直しはこれからさらに進めていきたいですし、Webも含めたショップの整備も必要です。ベイスターズラムネの例のような販路拡大もひとつ。そうしたことを着実に進めていくことでまだまだ拡大できる、本当に魅力的なコンテンツです。それがこれからのチャレンジですね。
もうひとつ、横浜DeNAベイスターズは「横浜にあるチーム」という圧倒的なブランド力、コアコンピタンスを持っています。これをどういう風に昇華させていくか。“I☆YOKOHAMA“というキャッチフレーズがあるのですが、「横浜に行ったらベイスターズのお土産を買って帰ろう」というくらい街に根差すような存在になっていきたいです。
最後に、横浜DeNAベイスターズに興味を持った方々にメッセージをお願いします。
アパレル業界で働く方々の多くはもちろん洋服が好きだと思いますが、一方で、洋服だけが好きという方は少ないんじゃないかと思っています。洋服が好きで音楽も好き、インテリアも好き、スポーツも好き、といった具合に複合的なカルチャーとして何かを実現したいと思っているような方であれば、おすすめしたい環境です。
感動する仕事がしたい方、感動のお手伝いをする仕事にやりがいを感じられる方、ぜひお待ちしています。
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株式会社横浜DeNAベイスターズ
事業内容 | プロ野球球団「横浜DeNAベイスターズ」の運営 |
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事業所 | 本社:横浜市中区尾上町1丁目8番地 関内新井ビル 7階 |
設立 | 1949年11月22日 |
代表者 | 代表取締役社長 岡村 信悟 |
従業員数 | 130名(2017年11月時点) |
資本金 | 1億円 |
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