アパレル企業特集

2019.08.09

devirock(グロウ株式会社)

子供服ブランド「devirock」で急成長のグロウが
価値観の共感を大切にする理由とは?

オリジナル子供服ブランド「devirock(デビロック)」をECサイトで展開し、楽天やSHOPLIST等のECモールで毎年のようにさまざまな賞を受賞。今回は、そんな関西で勢いのある企業のひとつ、グロウ株式会社にお伺いしてきました。代表取締役の宮本智彦氏と、パタンナーの平松珠希さんにインタビュー、グロウが生まれた背景、グロウが持つ想いや価値観、仕事のやりがいなどについてお話を伺いました。

自分の子供に着せる服が欲しい、と消費者目線でスタートした会社

宮本さんがグロウを立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか?

宮本:スタートは自分の子供に着せたい服がないと思ったことでした。色々調べてみたら、韓国の子供服はファッション性が高くて値段も手ごろだということを知り、これはビジネスになるんじゃないかと子供服のECセレクトショップを立ち上げました。EC経験もアパレル経験もなく、いち消費者目線から始めた会社です。

すぐに軌道に乗るわけでもなく、厳しい日々を送っていたある日、夜中まで仕事をしていたら1つの注文が入りました。僕は嬉しくなっちゃって、夜中に非常識とは思いながらも、すぐにサンクスメールを送りました。するとそのお客さまから「こんなに遅くまで仕事されているのですね、頑張ってください。商品楽しみにしています」とすぐお返事が届いたんです。そのとき、このビジネスは人の役に立っているんだな、とぐっときてしまって、絶対にこのビジネスで多くの人を幸せにする、と覚悟を決めたきっかけになりました。

誰かの役に立つというのはビジネスの本質でもありますね。

宮本:親御さんにとって子供は宝物です。大切にしたい、手を掛けたい。でも現実はやっぱり大変。そんな中、ネットで気に入った子供服を手軽に買えて家まで届けてもらえるECサイトはすごく便利です。ここにビジネスチャンスがあると改めて再確認し、毎日大変な親御さんたちにとって価値のあるサービスを創り上げたいと感じました。

セレクトショップから自社ブランド展開に切り替えた理由は何だったのでしょうか?

宮本:他社との差別化のためです。
セレクトショップを始めて分かったのは、仕入れ先から商品がなくなってしまうと、いくら売りたくても売れないということでした。また参入障壁が低いので、競合リサーチによっていくつもの店で同じ商品が並び、価格競争になることもビジネスメリットが感じられず、僕たちが良いと思った商品、売れると思った商品を、自分たちの責任のもとコントロールしたいと思うようになりました。
自社開発であれば、自分たちのこだわりを反映したものづくりができますし、売れると思った商品を大量生産することでスケールメリットを生み出し、低価格化が実現できます。そこで自社開発に切り替えることにしました。

宮本さんを始め、アパレル経験者が豊富ではない中で、自社ブランドに切り替えることのご苦労があったのではないでしょうか?

宮本:自分たちも経験不足で未熟でしたし、自分たちと同じ目線でものづくりをしていただける取引先ともなかなか出会えなかったので、最初は思うようなものが作れなくて苦労しました。ただ、やったことがないから分からない、できない、ではなく、やると決めたことをどう実現するかということしか考えていなかったので、色んな失敗もしながら、一つ一つ経験を重ねていきました。


徹底的なマーケティングをものづくりに落とし込み、ヒット商品を生み出す

振り返ってみて、今の成長にあたってのターニングポイントはありましたか?

宮本:ロングセラーで100万枚以上売れている990円のストレッチパンツがあるのですが、それが誕生したときがターニングポイントでした。徹底的にマーケティングし、カラーバリエーションを作り、伸縮があって動きやすく、着脱しやすく、気軽に何枚でも買える価格を設定し、絶対に売れる!というところまで突き詰めました。
990円で利益を出すためには初回2万枚の生産が必要で、当時のグロウにとっては社運を賭けるレベルでした。社員からの反対も正直あり、絶対失敗できないという思いとの狭間で悩んで、最終的に僕は信念を貫いて商品化しました。結果は大ヒットで、そこから商品の型数を増やし、今では2万枚の商品も普通になるほど、ブランド規模を成長させることができました。

初回で2万枚はすごいですね!

宮本:それぐらいのスケールがないと、高品質×低価格でお客さまに喜んでいただき、それを自分たちの利益に繋げることはできませんでした。リスクもありましたが、徹底的な調査とマーケティングによって売れる商品は生み出せるという自信になりました。

商品のクオリティやデザイン、価格を妥協することなく、企業としてのリスクを負う覚悟を持って、お客さまが喜ぶビジネスをする…言葉で表すと簡単ですが、実はすごく難しいことだと思います。

宮本:自分が消費者だったら買う商品じゃないと世に出してはいけない、というのが僕の持論です。安価な商品を作るために品質を落とすのは簡単ですが、それは作り手の都合でしかありません。大変ではありますが、「品質と価格のギャップ」という付加価値を生み出すことで、デビロックは他社と差別化できるブランドでありたいと考えています。

プロダクトアウト型のアパレル企業が多い中、消費者目線から生まれた企業の強みが活かされていると感じます。

宮本:綿密なマーケティングのもと、それを実現するため徹底的にものづくりにこだわり、ヒット商品が生まれたときの達成感はたまらないですし、何よりのやりがいです。ただ、利益を得て自分たちがごはんが食べられるのは、お客さまに喜んでいただけた結果であることを絶対に忘れてはいけません。お客さまへの感謝は常にありますし、デビロックのことを好きだと言ってくださるお客さまの期待をこれからも良い意味で裏切り、もっともっと驚かせるビジネスを展開していきたいですね。


子育てしながらでも自分のやりたい仕事がしたかった

平松さんは昨年、グロウ初の社内パタンナーとしてご入社されました。それまではどういうご経歴だったのでしょうか?

平松:私はずっとキッズパタンナーで、13年働いた1社目の企業を第二子出産のタイミングで退職し、その後はパートタイムとして2社経験、グロウは4社目で正社員として働いています。
約20年のキャリアは、決して順風満帆ではありませんでした。ひとつは子育てとの両立で、残業できないなら採用できないと言われるのは当たり前、社員として働きたくても私のような条件だとパートでしか働けないのかな、という思いを何年も味わってきました。
もうひとつは、仕事のスタンスです。自分にしかできないものづくりがしたい、自分の身に付けてきたことを次の若い世代に引き継いでいきたい、という思いを強く持っていたのですが、時間の制約もあってなかなかそれが叶う環境で働くことはできませんでした。

残業不可という条件によって、働く企業の選択肢が限られてしまっていたのですね。

平松:そうです。転職サイトや自力で求人を探しましたが「この会社は良さそうだけど私の条件じゃ働けないな」ということが多くて、実は前職時代にグロウの求人も目に留まって興味を持っていたのですが、18時定時とあったので、ここも無理だなと思っていました。

ではどういうきっかけでご入社に至ったのですか?

平松:ある日、以前の会社の元同僚から連絡があって「私の働いている会社に来ませんか?」と声を掛けてくれました。そこが偶然、興味を持っていたグロウだったんです。そのとき私は前職でのものづくりの価値観が合わず悩んでいたので、元同僚からフレックスが導入されて勤務時間の融通がききそうなことや、会社の理念、ものづくりのスタンスなどを聞いて、二つ返事で「詳しい話を聞きたい!」と伝えました。

前職ではどのようなことに悩んでいらっしゃったのですか?

平松:洋服が昔とくらべて低価格になっていく中、当時の職場では、低価格を実現するために品質を妥協することが普通になっていました。価格に見合った品質という考えが悪いわけではないのかもしれませんが、私は安い中でも創意工夫して良いものを作り、自信を持って商品を世に送り出したいという考えだったので、価値観の合う会社を探したいと考えました。

グロウではその価値観が合うと感じられたのですね。

平松:当時のグロウにはものづくりにおいて大きな課題がありました。サイズ基準がないままパターンを100%外注していたため、グレーディングが統一されていなかったのです。それを解決するため、社内にパタンナーを置いてグロウのサイズ基準を作っていきたい、というのが私に課せられたミッションでした。そのためには手を動かすだけの職人タイプではなく、能動的に物事を考えて動けるパタンナーが必要だという説明を受け、私もまさにそういう仕事がしたかったので、お互いの価値観が一致して入社に至りました。


自信を持っておすすめできるものを作るための妥協は絶対にしない

ご入社後の仕事内容と、入社前後のギャップがあれば教えてください。

平松:会社の方向性や価値観のギャップはなく、満足しています。
仕事内容は、企画を担当するデザイナーとデザイン・仕様について意見を出し合い、仕様書作成、パターン作成と外注管理、工場に依頼してサンプルをチェックし、必要に応じて軌道修正、生産に入ります。ものづくりの流れ自体は一般のアパレルと変わりませんが、企画段階からパタンナーも入って意見交換し、ものづくりを進めていく点は、グロウならではの特徴だと思います。
加えて、入社からのミッションであるサイズ基準を作っていく作業を行っています。

それだけの仕事をお一人で回すのは大変ですね!

平松:仕事内容自体は想定内だったものの、2019年SSシーズンから200型近くまで増えたときはさすがに大変でした。子供服の場合はグレーディングもあるので、すべて一人で回すのは1シーズン50型が限界だと思っていたのですが、その4倍ですからね。「えっ!」って思いましたけど、企画が始まってしまったら走り出すしかありませんから、覚悟を決めました。本当によくやったなと自分でも思います(笑)。

すごいと思います。そこまで突き詰められるのはなぜでしょうか?仕事において大切にしていることをお聞かせください。

平松:絶対に妥協せず、あきらめないことです。
宮本からもありましたが、自分が消費者だったら自分の作ったものを買うか?自分の子供に着せたいか?知り合いのお子さんにプレゼントしたいか?ということを常に考えて、自信を持って買えるもの、おすすめできるものを作ると決めています。20年の経験の中で仕事のスピードが上がったこと、日々の仕事の中で集中タイムを作ること、業務を細分化して自分のタスクのスケジュール管理をしっかり行うことで、限られた時間の中でも何とか妥協せず仕事ができています。

ただ、正直に言えば、まだまだすべてがうまくいっているわけではありませんし、会社の成長とともにますます業務が増えていくとことを踏まえると、早急にパタンナーの増員を行って体制を作らなければ、と考えています。


企業と社員の価値観が一致しているかを一番大切に

社風やオフィスの雰囲気はいかがでしょうか?

平松:職種や役割など関係なく、自由に意見を出し合える会社です。相手を否定することもないし、新しいことを言ってみると、じゃあやってみよう、と前向きに動けます。これまでは、男性の方が出世して、トップダウンで、有給も取れず、産休・育休復帰の理解も薄い、という昔ながらの体質の会社にいたので、ベンチャー気質な社風はすごく働きやすいです。

宮本:当社の場合、女性社員の方がたくましいんですよ(笑)。
平松も絶対に妥協しない!とかサムライみたいでかっこいいでしょ。

平松:やめてください(笑)。
あと、びっくりするくらいアパレル出身者が少なくて、商品企画が4名、生産・品質管理が7名のみ。マーケティングや分析やECサイト運営など、色んな仕事をしている社員がいて、アパレル出身じゃないメンバーが全員で洋服のことを考えているのが新鮮ですね。

マーケティングに力を入れているということですね。グロウではどのような採用方針なのでしょうか?

宮本:パタンナーのような専門職は求める経験・スキルが必要ですが、そうでなくても大丈夫なポジションに関しては、経験よりもグロウの価値観・理念に共感してもらえることを最重視しています。
新しいことをするためには古くからの慣例や常識を否定しないといけないこともあります。グロウが“業界の常識”にとらわれずビジネス展開できているのは、社員のアパレル業界経験にこだわっていないことも大きいのではないかと思います。それよりも、色んな業界で色んな経験をしてきたメンバーが同じ想いを持って集まり、新しいチャレンジをするほうが可能性が広がるんじゃないかと、僕は考えます。

平松:私のように自分で考えてどんどん動きたいパタンナーって珍しくて、基本的にパタンナーは職人タイプが多い職種です。そういう先入観も含め、前職までの環境では自由に動けなかったり、残業前提で時短では仕事は任せられないと言われたり、悔しい思いをたくさんしてきました。パートだからおとなしく働こうと思っていた時期もあったけど、仕事が全然楽しくなかった。
だから今、時間に制約があっても重要な仕事を任せてもらえて、お客さまのためのものづくりができる環境は本当に楽しいです。そのぶん責任も大きくて大変ですが、それがやりがいにも自信にも繋がっています。

パタンナーの方は…子育て中の方は…という先入観をなくせば、実は色んな価値観の方がいらっしゃって、平松さんにとってグロウがぴったりの会社だったのですね。

宮本:僕が採用において価値観を重視する理由はまさにそこです。価値観が合わない人と結婚して幸せになれると思いますか?なれないですよね。グロウの目指すことに対して、いいね!一緒にやりたい!という人が集まった組織でないと成長できないし、何より楽しくない。会社の知名度や給料、待遇など条件だけで選ぶ人って、結婚で言えばお金目当てで結婚する人と同じでしょう?もちろん条件も大切ですが、それだけでは、信頼し合える関係性は築けないですよね。

僕がグロウの代表として考えていることはすごくシンプルで、お客さまにとってデビロックの商品やサービスは魅力的か、自分がお客さまだったら買いたいか?一緒に頑張ってくれている社員は楽しく働けているか、自分が社員だったらこの会社で働きたいか?これだけなんです。
そこに共感していただけたら嬉しいですし、デビロックって良い商品作っているな、古い慣習のない組織で働きたいな、グロウだったら自分のしたいことが実現できるかも、と感じてくださった方はぜひ、歓迎いたします!

ここに注目!グロウってこんな会社

オープンでフラットなコミュニケーション

代表ともコミュニケーションを取りやすく、各部署間も活発にコミュニケーションを取っています。誕生日会の開催や社内メンバーや家族も参加できるイベントも多数実施、明るくオープンなコミュニケーションがグロウの魅力の1つです。

子どもがいても働きやすい

社員全体の3分の1がお母さん社員、時短勤務でがんばっているお母さんメンバーもいます。子供たちが自分たちの商品を楽しんで着てくれる喜びはひとしおです。お父さん社員は代表の宮本を含めて6名、子育てに理解ある環境が整っています。

GROW KID’S PROGRAM(グロウキッズプログラム)

グロウではこどもたちを応援するさまざまな取り組みを行っています。
“こどもの好奇心を大切に、好きなことから学びをつくる”をテーマに、年間を通して開催している最新教育プログラムです。体験型の学習コンテンツを通し、ただの暗記ではなく自ら好奇心を持って積極的に取り組む姿勢に導きます。

devirock(グロウ株式会社)

devirock(グロウ株式会社)

事業内容 Eコマース事業
インターネットメディア事業
事業所 本社:大阪府大阪市北区曽根崎新地2-1-23 JPR堂島ビル5F
設立 2008年4月
代表者 代表取締役 宮本智彦
従業員数 43名 ※正社員(2019年4月現在)
資本金 800万円

アパレル企業特集 最新記事

アパレル企業特集一覧