アパレル企業特集
2019.08.30
NANGA(株式会社ナンガ)
世界最高クラスのダウン製品を次々と生み出す
ナンガの次なるチャレンジとは
ヒマラヤにある8,000メートル級の高峰“ナンガバルバット”から名付けられたシュラフ・ダウンジャケット・アウトドアアパレルメブランド、「NANGA(ナンガ)」。原料の安全性と質にこだわり、「お客様の評価に値するものを作る」をポリシーに、真摯なものづくりを続けてきました。今回は、ナンガ代表取締役社長の横田 智之氏と、生産管理の水落 一彦さんにインタビュー。ナンガのものづくりのこだわりやこれからのチャレンジなどについてお伺いしました。
ナンガを形作るのは、ものづくりへの徹底したこだわりと
新しいことを学び、できることを増やしていく貪欲さ
まず、ナンガの成り立ちについてお聞かせください
横田:当社は祖父が当時「横田縫製」という企業名で創業したのが始まりです。布団加工・縫製を手掛けていたのですが、元請企業のコスト削減による海外生産シフトを機に、父の代で社名をナンガと改め、寝袋製造をスタートしました。布団と寝袋、似て非なるものではありますが、原材料の仕入れ先や加工技術などで継承できるものがあったため、もちろん苦労もありましたが、事業展開していくことができました。
ナンガといえば世界一の寝袋メーカーとの呼び声も高く、第一線で活躍する登山家から一般登山者、ハイカー、キャンパーまで、愛用者がたくさんいらっしゃいます。そうした方々に愛されるものづくりへのこだわりをお聞かせください。
横田:デザインや縫製などさまざまな要素がありますが、寝袋やダウン製品にとってもっとも重要なのは羽毛と縫製です。そこは布団時代からの強いこだわりで、ラグジュアリーダウンブランドにも負けない高品質なダウンを仕入れ、IDFLという世界的な羽毛製品の数値を基準にフィルパワー(羽毛体積)を出し、どこに出しても恥ずかしくないものづくりをしています。
ただ、羽毛や縫製は外からでは分からないものです。当時の父は「使ってみないと分からない」「使って良いと思ってもらえれば必ず評価いただける」というスタンスで、実際に使ってみてモノの良さを体感してくださったお客さまが口コミで評判を広めてくださり、現在の認知度になったと僕はとらえています。
寝袋メーカーとして順調な成長を見せていたナンガですが、ナンガの2代目となる横田さんによってアパレルへの本格参入をスタートさせます。そのきっかけは何だったのでしょうか?
横田:祖父と父がそれぞれ事業を立ち上げて成功させ、特に父の仕事は幼いころから見てきたので、自分も単に先代の事業を受け継ぐだけではなく、新しいことを始めてみたいと考えていました。ダウンジャケットを選んだのは父が寝袋を始めたのと同じで、原材料や生産など、ナンガとして持っているものを継承して始められるから、という理由でした。 洋服のものづくりのノウハウはまったくなかったのですが、ご縁があってOEMとしてダウンジャケットの相談をいただくことができました。「経験はないけど、作れる環境はある。やってみたい」と、先に受注してからどうやって作るのかを調べて考えて、試行錯誤のなかでスタートしました。
原材料など活かせるものがあるとはいえ、寝袋と洋服ではものづくりが全然違うと思うので、大変だったのではないでしょうか?
横田:仕様書の見方も型紙も何もかも知らなかったので、社員みんなで1から勉強しました。最初は納期に間に合わせられなかったり、お客さまの望む仕上がりにできなかったりして、取引先に何度も迷惑を掛けてしまいました。でも僕は絶対に「できない」とは言わなかったし、「ここまでできたので、もう少し時間が欲しい、絶対に何とかする」と交渉して、必ず最後まで作り上げました。最後までやりきることで生まれる信頼関係というのはありますし、また、そこでの失敗や反省を全員で話し合って次に活かすことができます。
大変でしたけど、自分がやると決めて始めたことに対して新しいことを知り、できることが増えていくことは純粋に楽しかったし、その気持ちがあったから乗り越えられて、今があるんじゃないかと思います。
総合アウトドアアパレルブランドとして
コア層からマスまで多くの方が楽しめるブランドにしていきたい
現在はダウンジャケットのブランドとしても高い評価を得て、人気アパレルブランドやセレクトショップとのダブルネーム展開やオリジナルのヒット商品も生まれています。現在、OEMとダブルネーム、オリジナルの割合はどのようなものでしょうか?
横田:現在は、OEMが10%、ダブルネームが60%、オリジナルが30%という割合です。
ダブルネームによってお客さまの認知と評価をいただけましたし、各ブランドからの発注によって今の自分たちがありますので、一緒にやりたいと言ってくださる限り、僕たちのできる限りのものづくりは一緒に行っていきたいです。それと並行して、ナンガのオリジナル商品を強化していくことが今後の一番のミッションで、そのために組織の見直しや人員強化などを進めています。
ナンガブランド展開として、具体的にはどのような強化を目指していらっしゃるのでしょうか?
横田:まずは主力商品であるダウンジャケットを見直し、段階的にバージョンアップさせていきます。それに加えて、ダウン以外の商品も増やし、グローバルな総合アウトドアアパレルブランドを目指します。
寝袋、ダウンジャケット以外の商品にも広げていくのですね!
横田:今後のナンガの成長を考えたときに、ダウンに特化した生き方をしていくのか、アウトドアアパレルを総合的に展開していくのか、2つの選択肢がありました。僕は後者を選びましたが、ダウンブランドとして評価いただいてきた中で、ダウン以外の商品も扱うことがどのような評価に繋がるのか。ものづくりだけでなく、ブランディングの観点からも大きなチャレンジになると思います。
かつてアパレルにチャレンジしたときのような、ナンガの新しいチャレンジですね
横田:ダウンジャケットはまだまだ改善の余地はあるとはいえ、一定の評価いただけるようになりましたが、他のアイテムはこれからです。ナンガとしてこういうものを提案していきたい、というブランドの軸を作り、新しいことへの学びを楽しみながら、「この商品を作って良かった」と自分たちが思えるものを生み出していけば、ちゃんとお客さまには評価していただけるのではないかと考えています。そういうものづくりが自分たちの自信につながっていますし、作るものが増えたとしても、そのスタンスは今後も変わりません。
たとえばどのような商品展開をお考えですか?
横田:カットソー、スウェット、ダウン以外のジャケット類など、現在企画中です。
アウトドアと言うと、山や川に行ったりキャンプしたりというイメージですが、僕たちはアウトドアという言葉をもっと広く捉えて、外のフィールドで遊ぶことそのものがアウトドアだと捉え、より多くの方にご愛用いただける商品をご提案していきたいと考えています。
今後、展開する商品が増えていく中で、国内生産だけでは難しくなってくるのではないでしょうか?
横田:すでに国内だけでは生産しきれない規模なので、昨年より海外生産も行っています。日本国内では最低賃金の上昇や原材料の高騰など、さまざまな理由でこれまでの価格を維持することが難しくなってきており、採算を取るためにはどうしても一定以上の価格を設定せざるを得ません。それらを踏まえ、今後国内では高品質な良いものづくりを行い、マスに向けての商品は海外生産を行う、という使い分けをしていこうと考えています。
ナンガといえばメイドインジャパン、というイメージのファンも多くいらっしゃると思います。
横田:僕たちもメイドインジャパンへのこだわりはもちろんあります。しかし、メイドインジャパンでないとナンガではない、ということではありません。どこの国で生産しようとも、ものづくりと真摯に向き合い、クオリティコントロールをしっかりしていれば、ナンガとしての信頼は変わらないはず。社員全員でも議論し、白熱してその場で答えは出なかったのですが、最終的には僕が社長としての責任で、海外生産も行うことを決断しました。
イメージは、自国でのものづくりは残した上で、第三国で量産向けの生産をしているグローバルブランドです。マス向けには安価な商品を気軽に楽しみ、メイドインUSAは高いけれど高品質でブランドのルーツが詰まっており、コアファンに人気がある。どちらも多くの人に愛されていて、それがブランドというものだと僕は思います。
ナンガも、メイドインジャパンでコア層向けの高品質なものづくりは今後も続けた上で、広くワールドワイドに展開していきたいですね。
常に新しいチャレンジに挑み、
全員が役割を持って難局を乗り越え、喜び合える企業でありたい
現在、新たなチャレンジをスタートさせたところですが、今後ナンガが成長していくためのポイントは何だと思いますか?
横田:ナンガの社長として、僕自身が成長しないといけないと思います。実務はスタッフにお任せするとしても、重要な判断は僕がしていくべき。そのためには、世界を見て、知らなかった他の世界をちゃんと学んで、スタッフに「こういう風にしていくといいんじゃないか」という指針やアイデアを話して、ナンガの世界を広げていきたいですね。それができないと、大事な局面で会社の方向性がぶれてしまうし、そんな会社ではスタッフも不安ですよね。
何より僕が、新しいチャレンジのためにもっと色んなことを知りたいと思っているので、貪欲に成長していきたいです。
横田社長が目指す、ナンガのこれからの目標をお聞かせください。
横田:総合アウトドアアパレルブランドになる、というのはナンガとしてのひとつの目標としてありますが、いち企業として僕が考える一番のゴールは、スタッフ一人ひとりにきちんと役割と仕事があって、その先に楽しさがあるという環境を作ること。新しいチャレンジには苦労がつきものですが、その難局を全員で乗り越えて、「やって良かった」と喜び合える企業であることが、ナンガを経営していく上での一番の目標です。
まず僕が、スタッフが働きやすい環境づくりを行う。その環境のもと、ファンの方々の期待に応えられるものを一丸となって作る。その結果、お客さまが喜んでくださって、ナンガのファンが増える。その経験を通じてスタッフ一人ひとりの成長に繋がって、さらによいものづくりができる。そういうサイクルが生まれて、「ここで働いていて良かったな」って思ってもらえれば、それがナンガとしての価値ではないかと思うんですよね。
なので、そういうところに共感して、一緒に向き合ってもらえる人に来ていただけると嬉しいです。
水落さんにASK!ナンガ本社で過ごす1年間
昨年入社した水落(みずおち)さんは、東京採用の企画職ながら、期間限定で本社勤務されているとお伺いしました。その理由と、現在の仕事内容を教えてください。
水落:代表の横田からもあったように、ナンガはものづくりを大事にしている企業なので、まずはそこをちゃんと理解したいという思いから、1年間の期間限定ではありますが、研修という形で本社に身を置いています。
現在は本社での仕事と東京での仕事と兼務していまして、月から木曜日までは本社で、取引先とのコミュニケーションや資材の発注、メンバーとの業務すり合わせ、直近で入社したスタッフにナンガの仕事を伝えるなどといった業務を行っています。金曜日は本来の企画職として東京で取引先と打ち合わせをして企画を進め、週末は東京で過ごすことが多いです。
本社のある滋賀では、どのようなことをして過ごされていますか?
水落:こちらは琵琶湖、山、川と自然が多いので、アウトドアが好きな人にとっては天国のような環境だと思います。僕も来たばかりのころに伊吹山に登ったりしましたが、実はどちらかというとインドア派で(笑)。個人的に戦国時代の、特に石田三成が好きなので、石田会館(石田屋敷跡・石田三成出生地)のおじさんと石田三成の話で3時間盛り上がったり、関ケ原の古戦場に行って思いを馳せたりと、満喫しました(笑)。
横田:生まれ育った環境や長く過ごした環境が心地良いことは間違いないので、全員が全員、この土地に馴染まないとナンガでやっていけない、というわけではありません。なので、覚悟を持って引っ越ししなきゃとか、重い気持ちを持つ必要は全然なくて、もしナンガに興味を持っていただけるのであれば、まずは飛び込んでみてください。
ものを作ることが楽しいなら本社、物事を考えるのが好きな方は東京。ナンガはそういう役割分担でやっているので、まずは何に興味があって、どんな仕事がしたいかという話からスタートして、当社でそれが叶うということになれば、それが実現できる場所で一緒に切磋琢磨していきたいです。その上で、プライベートでも楽しみを見つけてもらえれば嬉しいですね。
NANGA(株式会社ナンガ)
事業内容 | シュラフ(寝袋)・ダウンジャケット・アウトドアアパレルの 企画・製造・販売 |
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事業所 | 本社:滋賀県米原市本市場182-1 |
創業 | 1941年(昭和16年) |
代表者 | 代表取締役社長 横田 智之 |
従業員数 | 29名(2019年8月現在) |
資本金 | 2,000万円 |
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