アパレル企業特集
2024.05.10
NANO universe(株式会社TSI)
帰ってきた事業部長の大塚 有希さんに聞く、
ナノ・ユニバースの現在地、そして未来
セレクトショップとして高い知名度を誇るナノ・ユニバース。運営会社の株式会社TSIは、50以上のブランドを持つ大手企業です。今回は、ナノ・ユニバース事業部長の大塚さんにインタビュー。大学卒業後、ナノ・ユニバースに入社し事業部長を任されるまでになったものの、退職。その2年後にナノ・ユニバースの事業部長に舞い戻ったユニークな経歴の持ち主です。そんな大塚さんの描くナノ・ユニバースの現在地と未来についてお話を伺いました。
もくじ
今回、この方にお話を伺いました!
ナノ・ユニバース事業部長
大塚 有希(おおつか ゆうき)さん
2003年、株式会社ナノ・ユニバース(当時)に販売員として入社。店長、バイヤー、ディストリビューター、MDなどを経て2016年にナノ・ユニバースの事業部長に就任。ナノ・ユニバースがグループ会社と統合し、株式会社TSIとなった2021年に退職。コンサルティング企業への転職を経て、2023年3月に再び株式会社TSIに入社。再びナノ・ユニバースの事業部長に就任し、現在に至る。
ナノ・ユニバースは「色気をまとわせる」ブランド
まずはナノ・ユニバースというブランドについてを教えてください。
ナノ・ユニバースのブランドコンセプトは「色気をまとわせる」です。お客さま自身の個性や魅力を引き出すことで、お客さま自身が気付いていない色気を発見するサポートをしていきたいと考えています。お客さま一人一人が自己の内面にある魅力、色気を発見し、自信を持って表現できるようになることで、人生が豊かになり、ひいては社会に対してもポジティブな影響があると思っています。
TSIが持つさまざまなブランドの中で、ナノ・ユニバースの位置づけはどのようなものでしょうか?
売上規模で言うと上位のブランドですので、ナノ・ユニバースの売上が会社全体にもたらす影響は小さくないですし、そういう意味で私たちの責任は大きいと考えています。
一方で、ここ数年は本来ナノ・ユニバースが持つブランド力に対して、バリューを出しきれていなかったというのが正直な気持ちです。売上においても利益においても、社内でトップランカーのブランドになっていかなければならないと私は思いますし、会社からもそれを期待されていると思います。
ナノ・ユニバースの組織構成を教えてください。
大きくは、モノを作る「商品部」とモノを売る「営業部」の2つに分かれています。
まず商品部はメンズとウィメンズのセクションに分かれており、それぞれMD、バイヤー、デザイナー、パタンナー、ディストリビューターがいます。生産管理はメンズ・ウィメンズの区別なくひとつの組織にすることでスケジュールや品質、原価などのコントロールがしやすいようにしています。
営業部は店舗運営とEC、マーケティングのセクションがあり、顧客データを分析して最適な体験を提供し、売上を作っていくという役割を担います。ECやマーケティングはもともとTSI全体で横串の組織だったのですが、今期よりブランドごとの組織に変更し、ブランド戦略や予算管理が進めやすい体制となりました。
また、事業部長直轄でカスタマーセンターがあり、しっかり顧客の声を拾い上げて改善に繋げていく、そんな組織になっています。
リブランディングから1年後、棚卸を行うことで今後の方向性を見いだした
2022年3月にリブランディングの発表があり、その中で「マルチレーベルストアへの変革」が掲げられていました。その頃、大塚さんは一度ご退職されていますよね?
長く同じ環境にいたため外の世界を見たいと思い、リブランディングの1年前、2021年にコンサルティング会社へ転職しました。アパレルや小売企業を顧客としたプロジェクトにも複数参画し、非常にハードでしたが、アパレル業界を外から見る貴重な経験ができ、多くのことを学びました。
実はコンサルでの仕事は2年間と決めており、その後はまたアパレル業界に戻る予定でいました。ただ、ナノ・ユニバースに戻るつもりはなくて。ありがたいことに戻らないかと声を掛けてもらっていましたが、離れている2年でリブランディングなど状況も変わりましたし、求められている人物像と自分の強みが合致していないのではないか、と思っていました。
ではなぜナノ・ユニバースに戻られたのですか?
ナノ・ユニバースに強い恩を感じていたことが大きかったと思います。ここまで育ててもらいましたし、大好きなブランドですから。そして何より、ナノ・ユニバースで働く人たちやその家族に、ナノ・ユニバースと関わることでハッピーになってもらいたいという思いがありました。そこに対して、自分が役立つならばと思い、復職を決意しました。
復職はリブランディングから1年後の2023年3月でした。そこからどのように現在に至るのでしょうか?
まずは2ヶ月ほど掛けてリブランディングの棚卸を行う場を設けました。そこでリブランディングのポジティブな面とネガティブな面を洗い出し、続けること・見直すことを決めました。
リブランディングのポジティブな面の一つは、商品開発です。マルチレーベル化によって、レーベルごとにディレクターを置いたことで、さまざまなものづくりのプロセスをアップデートする機会になりましたし、今後の商品開発にも活かされると思います。
また、価格設計のための情報を得られたことも大きな収穫でした。小売において、商品価格の設定は繊細で難しい問題です。今回のリブランディングでは思い切った価格の引き上げを行いましたが、お客さまの反応や売上の数字から、どのあたりに価格のボーダーを置くべきかが見えてきました。
ネガティブな面は、手段の目的化が起こってしまったことです。マルチレーベルストアは、あくまでブランドのビジョンに対する手段、“How” です。しかし、“Why” つまり何を目的としたマルチレーベル化なのかを消費者に打ち出せていませんでした。コンセプトである「色気をまとわせる」の部分が抜け落ちて、「マルチレーベル化」が独り歩きしていたのです。そこで現在、ブランドの“Why”(何のために)、“What”(なにを)すべきかをみんなに繰り返し伝え、組織に浸透させることを意識しています。
「ナノ・ユニバースらしさ」とは何か?を全員で考え続けること
現在はどのような方針で事業を進めているのでしょうか?
戻ってからの1年間でナノ・ユニバースの状況や課題が見えてきましたので、2024年度からは3つの注力ポイントを掲げました。
1つ目は、「ナノ・ユニバースらしいスタイルの創出」です。私は、ブランドの個性を醸成する上で最も大切なことは「スタイル」だと思っています。ナノ・ユニバースと聞いた時に想起される姿をしっかり訴求していこう、ということをまず掲げました。
2つ目は、「前年踏襲の脱却」を挙げました。これまでのナノ・ユニバースは、前年売れていた商品を踏襲して翌年も出すことが多くありました。ですが、昨今の市況を考えると、これまでと同じことをやっていても成長は見込めません。常に新しい打ち手やスタイル、コンセプトの継続的な提案をしていくことが必要なのです。そうは言っても、今までやってきたことをすべて捨てるわけではなく、軸足を置きながらもう片方の足をピボットさせて新しいことにチャレンジするイメージです。
3つ目は、「優良顧客の再獲得」です。数値などから、リブランディングによって距離のできてしまった顧客の方々がいることが分かったので、CRMチームを中心に改革を進めています。先ほどもお伝えしたとおり、マーケティングチームは会社全体組織からブランドに紐づく組織へと変更されました。それによって一体感を持ってブランド戦略を組みやすくなり、さらに力を入れて取り組んでいます。
大塚さんから見て、ナノ・ユニバースに変化のようなものは感じられますか?
リブランディングの棚卸によって色んなことが整理され、良いことはより良く、課題は改善していける組織に変わってきていると思います。「ナノ・ユニバース」ってなんだろう、ということを全員で考え抜き、話をしながら何度も言語化する中で共通認識が生まれ、少しずつ前進してきていると感じます。
「僕らの代で最高のナノ・ユニバースにしよう」という話をよくしているのですが、最近はその一端が見え始めていて、今期の売上はいい調子で推移していますし、EC売上も右肩上がりです。
向かうべき方向がクリアになり、売上が上向いてきたことで、みんなの自信にも繋がってきている。そういった変化を見ているのは本当にうれしいですね。
誰もが自身の役割に全力でチャレンジできる環境を作りたい
大塚さんが組織づくりにおいて意識していることはどんなことでしょうか?
大きく2点あります。
ひとつは、スタッフ一人一人が自分の頭で考えて、自走することです。かつてのナノ・ユニバースでは、各部署の役割がしっかりと言語化しきれていない一面があったため、現在は部署ごとに「あなたの役割はこれです」と役割とゴールを明言しています。
たとえば「商品セクションは、お客さまから愛され、スタッフに支持される商品を創出することがいちばん大事な役割です」「店舗運営チームは、あなた自身を愛してもらう努力をしてください」「ECチームは、商品を愛してもらえる努力をしてください」といったものです。役割とゴールをしっかり言葉で伝えることで、自分たちがその役割を果たすためにどうするか、考えながら動きやすくなったのではないかと思います。
もう一つ大事なことは、失敗を恐れずチャレンジすることです。新しいことにチャレンジしないとブランドとしての成功はありません。大小を問わず、チャレンジしているスタッフがいたらできる限りプッシュしていきたいですし、チャレンジすることを賞賛し合える組織文化を作っていきたいと考えています。
ナノ・ユニバースの今後の展望について教えてください。
まずはナノ・ユニバースを再現性高く営業利益を上げることのできるチームにしていきたいと思っています。再現性高くというのは、良い意味で属人的ではなく、誰が属していても高いパフォーマンスを発揮できる組織にしたいということです。
その先は、ナノ・ユニバースから新しいブランドを創出していきたいです。2023年秋に「オテルパラス」、2024年に「アッサンブロン」というブランドをそれぞれ立ち上げ、ナノ・ユニバースのハウスブランドとして運営しています。これらのブランドが成長して、独り立ちできるような規模になっていくと、スタッフが活躍できる環境もさらに増えていくことになります。そんなブランドを一つでも多く作っていきたいですね。
最後に、こんな方に来ていただきたいというメッセージをお願いいたします!
自身の役割を理解し、自分で考えて動ける人に来ていただきたいです。どのポジションにおいても、置かれた役割を起点にそこから自分で走り出せる人を必要としています。組織が求める仕事のボーダーを少しでも超えて、バリューを創出しようとする人と一緒に仕事がしたいなと思います。
私としては、皆さんがどんどんチャレンジできる環境を作っていきます。去年までの当たり前を否定し、新しい視点や価値を生み出せるブランドでありたいと強く思っています。
新しいチャレンジをしたい方、その中で成長したい方にとってすごく良いフィールドですし、私自身、そんな方からたくさんの刺激がもらえることを楽しみにしています。
NANO universe(株式会社TSI)
事業内容 | 衣料品全般の企画・製造・小売り・卸及び輸出入 |
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事業所 | 本社:東京都港区赤坂8-5-27 住友不動産青山ビル |
設立 | 2014年3月3日 |
代表者 | 代表取締役社長 下地 毅 |
従業員数 | 3,840名(2024年5月現在) |
資本金 | 1億円 |
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