アパレル企業特集
2020.05.07
MARK STYLER株式会社 代表取締役社長 秋山正則氏インタビュー<前編>
新ブランド・eコマース・海外展開、3つの柱を掲げた
MARK STYLERはどのように変わったか
MARK STYLERの成長の3本柱「新ブランド」「eコマース強化」「海外展開」
そんな話を伺ったのが、2017年7月のことだった。
それから2年8ヶ月、それぞれの事業はどのような動きを見せているのだろうか?
代表取締役社長の秋山正則氏に、3回目のインタビューを行った。
30~40代向けの新ブランドはターゲットに合わせてじっくり成長を
前回のインタビューが2017年7月なので、2年8ヶ月ぶりとなります。当時、MARK STYLERの成長の3本柱として、「新ブランド」「eコマース強化」「海外展開」を挙げていただきましたが、その後のご状況はいかがでしょうか?
まず、新ブランドのことからお話します。
30~40代に向けた「ELENDEEK(エレンディーク)」と「UN3D.(アンスリード)」は、じっくりブランドを育てるというスタンスで、青山の旗艦店を中心に、それぞれ3~4店舗の出店と、eコマースを展開しています。おかげさまで2019年度は前年比で130%前後の成長ができました。
ファミリー層向けにSC(ショッピングセンター)へ出店した「COTORICA(コトリカ)」は2019年度に前年比140%前後と成長がようやく見えてきました。
課題ももちろんあります。
まず、「ELENDEEK」と「UN3D.」は、メイン購買層が20~40代と幅広く、すべてのお客さまのニーズに応えようとしすぎてしまっていました。そこで改めてターゲットを明確化し、どのように展開していくのか、MD再構築を行いました。
「COTORICA」は、競合ブランドとは規模感が違うため、同じ戦い方ではなく、MARK STYLERらしさを再考し、「MARK STYLERのブランドのファンだったお客さまがやがてご家族をお持ちになり、郊外に住まうライフスタイルになったとき、どんなブランドが提案できるか?」とコンセプトを見直しました。他にはない都会的で尖りがあり、リーズナブルに購入できるブランド、というポジションで昨年再スタートし、徐々に売上が伸び始めたところです。
それぞれのブランドが、課題を持ちつつしっかり向き合い、成長に繋げているのですね。
MARK STYLERはこれまで多数のブランドを立ち上げ、およそ1年~1年半で黒字化させてきましたが、10~20代向けブランドと、もう一つ上のレイヤーのブランドとではスピード感が異なり、じっくり構えてお客さまとともに成長させないといけないことが分かりました。この3ブランドについては、時間を掛けながら丁寧に育てていきましょう、という状況です。
自分たちで自分たちの商品の価値を決めて販売する
では、2番目のeコマースについてお伺いします。どのブランドもさらに強化し、成長している領域だと思います。
この2年半におけるもっとも大きな決断は、国内におけるeコマース展開を、自社ECサイトである「RUNWAY channel(ランウェイチャンネル)」と、「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」さんに絞ったことです。
これがどういうことかというと、大きく2点あります。ひとつは、“一物二価” をやめ、“一物一価” にしていこうということ。もうひとつは、お客さまの行動に合わせてECサイトと店舗の提案をシームレスに行っていこうということです。
まず一物二価をやめる、とは具体的にどういうことでしょうか?
モノの価値をできるだけ自分たちでコントロールできる環境にしよう、ということです。
例えばあるモールサイトさんから、「MARK STYLERの商品をある程度のボリュームで買い取りたい」とご提案をいただいたとします。一見嬉しい提案に見えますが、私たちは中長期的にはそうではないと捉えました。確かに一時的な売上はありますが、買い取った時点でその在庫は私たちの手から離れてしまうので、私たちが1万円で売りたいと考えて作った商品が、ポイント還元などを付けて実質価格7000円や5000円で販売されてしまう、ということが起こり得てしまうのです。
少し極端な例かもしれませんが、“自分たちで自分たちの商品の価値を決めて販売する”それは魂を込めてものづくりをしているアパレル企業として、絶対に手放してはいけないものだと考えました。
アパレル企業として、ブランドの価値を守ろうということですね。
もちろん、モールサイトさんが悪いという話ではありません。価格競争で戦うのはビジネスとして当然ですから。ただ、MARK STYLERがそれに流されてしまうことで、“ファッションを通じて夢を売っていきたい” という根底にあるビジョンが崩れてしまうかもしれないことを恐れたんです。
そこで私たちは、各ブランドの販売戦略や値下げ方針を明確化し、その思いに共感してくれるパートナーさんとのみ、お取り組みをさせていただくことにしました。それが現在ZOZOTOWNさんです。もちろん難しい苦渋の選択であり、関係者と何度も話し合いましたが、これ以上売上規模が大きくなると影響が大きくなりすぎてしまうと考え、最後は私が判断しました。
ブランドのファンになっていただくためのプロセスとは
それではもうひとつのポイント「ECサイトと店舗をシームレスに提案する」についてお聞かせください。
これは、ブランドのファンを作るためにはECサイトと店舗のどちらも必要、ということです。
仮に、ZOZOTOWNさんで初めて当社ブランドの商品を買った方の購入額が5000円とします。これは欲しい商品をたまたま見つけてご購入された状態です。気に入っていただけたら、今度はブランドに興味が沸いて、公式サイトであるRUNWAY channelにアクセスします。MARK STYLERの色んなブランドを知ってお買い上げいただくと、今度は8000円になります。他のブランドの商品を併せて買ったり、小物をセットで買ったり、という状態です。この方々に対してアプローチして、リアル店舗に足を運んでもらえたら、そこでの購入額は12000円になります。ブランドのファンになると、店舗にも足を運び、ECサイトでも買い、セールは並びたくないからネットで…と各チャネルをうまく使い分けるようになると、18000円にまでなります。
ブランドのファンになっていく過程が分かりやすいですね。
簡略化はしていますが、大まかにこのようなデータが取れているので、そういうお客さまをお一人でも多く増やしていきたい。そのためには、ECサイトだけ頑張っていてもダメなんです。
MARK STYLERは自社開発のECサイト、RUNWAY channelをいち早く立ち上げてeコマースの売上を伸ばしてきたので、販売スタッフから、「MARK STYLERはもう店舗じゃなくてECサイトで勝負するんですね」とたまに言われるのですが、そうではありません。お客さまがブランドのファンになってくださる過程には必ず店舗が必要で、店舗とeコマースどちらも強みを持たないといけないんです。
先ほどの「ファンになっていくストーリー」を作り出すため、ということでしょうか。
そうです。ECサイトは、店舗では実現できない商品数を展開でき、どこでも買えるという利点があります。一方でECサイトは商品単位で横一列に見えてしまうため、ブランドの世界観が伝わりにくい。ブランドの世界観を立体的に表現する空間と伝えるスタッフがいて、接客を通じてブランドのファンになっていただき、店舗でもECサイトでも、好きなときに好きな場所で好きな商品をお買い上げいただく。その環境をお客さまに提供することが大事だと思っています。
実際、RUNWAY channelの会員向けにクーポンを使った店舗誘致キャンペーンを行ったところ、「初めてお店に来たら、こんな品ぞろえになっていることを初めて知りました!」といった貴重なご意見をたくさんいただきました。ですので、今後もZOZOTOWNさんをはじめ、eコマースからMARK STYLERのブランドを知ってくださった方に、ファンになっていただくための仕掛けをいろいろ考えていきます。
MARK STYLER株式会社
事業内容 | オリジナルブランドによる婦人服・服飾雑貨の企画開発、 直営店での小売ならびにフランチャイズ店、専門店等への卸売 自社運営eコマースサイト「RUNWAY channel」および 他社運営eコマースサイトを利用した商品のインターネット販売 |
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事業所 | 本社:東京都渋谷区広尾5-8-14 |
設立 | 2005年11月 |
代表者 | 代表取締役社長 秋山正則 |
従業員数 | 1,045名 ※正社員:639名(2020年2月末現在) |
資本金 | 1億円 |
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