アパレル企業特集
2020.05.18
MARK STYLER株式会社 代表取締役社長 秋山正則氏インタビュー<後編>
新ブランド・eコマース・海外展開、3つの柱を掲げた
MARK STYLERはどのように変わったか
MARK STYLERの成長の3本柱「新ブランド」「eコマース強化」「海外展開」
そんな話を伺ったのが、2017年7月のことだった。
それから2年8ヶ月、それぞれの事業はどのような動きを見せているのだろうか?
代表取締役社長の秋山正則氏に、3回目のインタビューを行った。
eコマースと店舗はどちらも同等にお客さまのための重要なチャネル
「ファンになっていただくための仕掛けを考える(※前編参照)」とは、例えばどういうものでしょうか?
何の動機でどんなメリットを提案すれば、お客さまが店舗に足を運んでくださるか。単にクーポンを配布するだけではなくて、予約会や、時期に合わせたイベントなど、プレミア感のある楽しい仕掛けを考えています。
あとは何より、販売員の力じゃないでしょうか。「髪型変わって素敵ですね!」「先日着ていらっしゃったワンピースと合いますよ!」…など、対面のコミュニケーションで生まれる気付きや提案は、まだまだ現在のAIには到底できません。情報の蓄積でAIの精度が上がったとしても、それはあくまで、その人が自覚している情報によるものです。
私たちが考える接客の最大の価値は、お客さまに気付きを提案することです。店舗に足を運ぶことで、「こんな服も似合うんだ!」と新しい自分に気付く、それこそがファッションの楽しさであり、本質であると私たちは考えています。ファンの方々はそのワクワクが欲しくて、店舗に足を運んでくださるのだと思います。そんなブランドにしていくためには、eコマースも店舗も、まったく同等に重要なのです。
店舗とECサイトを切り離さず、同じ「お客さまのためのチャネル」として成長させるため、販売スタッフの方々に話していることなどはありますか?
一番伝えているのは、センスを磨くことです。映画を観たり音楽を聴いたり、普段は行かない美術館に足を運んでみたり、お客さまとお話をしたときに、話題として盛り上がるようなコンテンツに触れること。それらのインプットすべてが接客に繋がるので、自分たちが新しいことに触れ、人としての厚みを身につけるための投資をしてみよう、と話をしています。
もうひとつ、MARK STYLERでは以前より、ブログにアップした“スタッフコーデ”が売上に直結したらインセンティブを支払う制度があったのですが、近年それをSNSにまで拡大しました。また2019年度からは販売職のベースアップや、本社職やブランドを超えた異動を含めたキャリアアッププランの見直しを進めています。前向きに働けるような環境は、これからも整備していきたいですね。
中国法人は経営陣を入れ替えてリスタート
中国ならではのトレンドをしっかり読んで“スタイル”を提案する
それでは3つ目の、海外進出に関してお聞かせいただけますでしょうか。
前回、中国進出をリスタートしするとお話しましたが、実はこの2年半、苦戦しました。
できる限りの準備はしたのですが、やってみて初めて知ることが多く、簡単に言うと、中国の若い女性たちのカルチャーやファッションに対する意識が日本とは違い、日本の成功体験は通用しないことがよく分かりました。立て直しの一環として、2019年9月1日より、中国法人のCEO・COO・CMOを、現地で成功体験を積んだ3名に入ってもらい、再度リスタートを切りました。
日本と中国の違いは、例えばどういうところだったのでしょうか?
例えば日本と比べて、より個性的でエッジの利いたブランドの方がお客様の反応が良いようです。その考えで展開ブランドを組み直します。
また、日本のファッションビルでは15~20坪くらいから出店できますが、中国では一番狭くても50坪レベルです。日本での店舗運営の感覚からすると広すぎるのです。一つのブランドでは店頭を演出しきれないので、今は、複数のブランドをミックスした店舗を造り販売を展開しています。
この2年半でのご経験や、新たに中国法人のトップに就かれた方々の知見によって、改善されていっているのですね。
ここ数年で感じたことですが、中国のニュージェネレーションのトップリーダーの多くは帰国子女なんです。NYやパリに生まれ、中国と行き来するのが当たり前のライフスタイルで、非常に感度が高い。そのインターナショナルなパワーを持った方々がリーダーシップを持って社会を作り始めているので、単に分かりやすく個性的なモノを売り込むだけでなく、中国のトレンドをしっかり読んで、それに合わせたブランドを投入したり、さまざまなコラボレーションをして新たな価値を作ってみたり、そういう「シチュエーション」を作ることが大事だと感じています。
長期戦で、洋服だけではない、“スタイル”を提案するところから作り出していきたいです。
モノ、つまり商品だけではなく、モノとコト体験を併せて提案する、ということでしょうか?
そう。私は最近特に、みんなリアルな場面で盛り上がりたいんだなと感じています。たぶんそれは、ファッションショーでもいいし、音楽でもいいし、サッカーでもラグビーでもオリンピックでも良いんです。集まって、コンテンツを楽しんで、歓喜して、良かったね!感動したね!と共有し合って、そういう体験をすごく大切にしている。MARK STYLERはファッションでみんなを幸せに、という会社なので、それは日本も中国も関係なく、ファッションのワクワクを仕掛けていきたいですね。
ファッションの未来のため、
ヤング層へのファッションの提案に力を入れ続けていきたい
新ブランド、eコマース、海外事業と、それぞれの成長と課題、今後についてお話を聞かせていただきましたが、一貫してファッションを通じてみんなに喜んでもらいたい、という思いを感じます。
今のファッション業界、ヤングゾーンに向けてブランドを立ち上げる企業が少なくなっています。なぜかというと、人口統計と実績を分析すると、30~40代向けブランドの方が明らかに売れるからです。実際、30~40代向けのブランドはすごく増えています。
でも、昔より減っているとはいえ、10~20代前半の方々がいなくなるわけではないんです。
この先、ファッション業界を盛り上げようと思ったら、できるだけ若い頃からファッションに興味を持ってもらわなければなりません。若い頃ファッションに触れてこなかったのに、ある日突然、「ファッションが好き!」とはならないんです。そのためには、一定の若い層に向けたワクワクする仕掛けを続けていかなければならないし、それがファッション業界でビジネスをするものの責任ではないかと私は考えています。
近年、ファッションというくくりで様々なビジネスが生まれてきました。その中でMARK STYLERは、ファッション好きが集まる、ファッション好きのためのアパレル企業であり続けたいと考えています。ファッションをもっと盛り上げるため、若いみなさんに楽しんでいただけるブランド作りをしていきますし、これからも新しいものを生み出し続けていきます。そういう集団であり続けられれば、組織も常に活発化し、おもしろい人が「おもしろそうだな」と集まってきてくれるはず。
日本のアパレルだけを見れば、厳しい状況かもしれませんが、世界規模で見ればアパレルは成長産業です。
広い視野で、戦えるマーケットを見つけて、これからもチャレンジしていきたいと思っています。
MARK STYLER株式会社
事業内容 | オリジナルブランドによる婦人服・服飾雑貨の企画開発、 直営店での小売ならびにフランチャイズ店、専門店等への卸売 自社運営eコマースサイト「RUNWAY channel」および 他社運営eコマースサイトを利用した商品のインターネット販売 |
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事業所 | 本社:東京都渋谷区広尾5-8-14 |
設立 | 2005年11月 |
代表者 | 代表取締役社長 秋山正則 |
従業員数 | 1,045名 ※正社員:639名(2020年2月末現在) |
資本金 | 1億円 |
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