Fashion★シゴトNEWS
2024.06.20
ファッションデザイナー必見!<デザイン画・仕様書>準備のポイント大公開!スタッフ座談会
デザイナーの方の転職活動で提出が求められる「デザイン画」。
前回の座談会では、転職活動で必要なデザイン画のポイントをお話ししました。
今回は、デザイン画のほかに仕様書の提出が必要な場合や、企業側が見ている視点、デザイン画作成のポイントなどを最新の内容にアップデートしてお届けします!コンプライアンス意識の高まりから企業の選考に対する目線も変わってきていますので、デザイナーの方はぜひチェックください!
もくじ
みなさんこんにちは。今回のテーマは「デザイン画と仕様書における準備のポイント」です。
まずは簡単にみなさんの自己紹介をお願いいたします。
キャリアアドバイザーの大堀です。キャリアアドバイザー歴18年、数多くの方の転職をご支援してきました。数年前から専属チームを組成し、管理職やマネージャー以上の方々を中心に担当させていただいております。
キャリアアドバイザーの島根です。前職までのファッション業界での経験、採用人事の経験を活かし、現在はデザイナーやMDなど主に商品系の専門職を中心にサポートしています。
営業の藤森です。ODM企業で企画営業を経験後、キャリアアドバイザーとしてクリーデンスに転職しました。産育休を経て、現在は営業職を担っています。
仕様書は、企業やその業態などによって書き方や精度が大きく異なる
デザイナーの転職活動において、デザイン画の提出はほぼマストと言われていますが、併せて仕様書の提出を求められる企業も多いです。改めて、「仕様書とは何か」について聞かせてください。
仕様書は、プラモデルの設計図のようなもので、平面に描いた絵を具現化するための指示書です。仕様書をもとに工場が形にしていきますが、詳細の指示がないとまったく違ったサンプルが上がってきてしまいます。情報に厚みのある仕様書であるほど、デザイナーのイメージと近しいものになり、精度が高まります。
デザイナーはどれだけ詳細な指示書が書けるかが重要ということですね。
それは間違いないのですが、一概にも言い切れません。というのも仕様書は、所属している企業やその業態によって、書き方や精度が大きく異なるんです。
というと?
たとえば商社やOEMは工場と直接やりとりする業態なので、デザイン画よりも精度の高い仕様書を作成するスキルが重視されます。内容の細かさはもちろん、海外の工場向けであれば英語表記にするなど、受け手にとって分かりやすい仕様書であることが重要です。
一方で、生産を外注しているブランド等の場合、取引先の商社やOEMが仕様書を作成するため、ブランドのデザイナーが仕様書を書く機会はほとんどありません。書いても簡単な指示にとどまる場合が多いです。
また、仕様書は社内にパタンナーがいればパタンナーが、いなければデザイナーが書くケースが多いです。つまり、必ずしも詳細な指示書が書けないとダメということはなく、所属する組織に応じたスキルであることが大事なのです。
デザイン画はクリエイティブの感性やブランド理解力を、仕様書は実務スキルを測るために見られている
デザイン画や仕様書を通じて、企業は何を見ているのでしょうか?
大まかに言うと、デザイン画では感性やブランドの理解力を、仕様書ではそれを形にするための実務スキルを見ています。ブランドのデザイナーはデザイン画が、商社やOEM・ODMは仕様書が重視される傾向にあります。
提出物を通じて、業務環境や体制、ボリューム、スピード、精度などをくみ取り、それが自社の環境やスタイルとマッチしているか、即戦力として活躍できるかをチェックしています。
なるほど…デザイン画や仕様書はどのタイミングでチェックされるのでしょうか?
最初にある程度のスキルチェックが入るため、書類選考で提出することが多いです。デザイン画は別途課題が出ることも多く、その場合はポートフォリオとは別で提出が必要になります。
どんな課題が出されることが多いですか?
ブランドやシーズンのテーマ、コンセプトが伝えられた上で「このアイテムのデザイン画を何パターン作ってください」という課題が多いです。アイテムが指定されないケースもあります。
課題を提出した後で、内容を説明する機会はありますか?
提出後の面接で聞かれることが多いです。作成の背景・意図はもちろん、販売までを想定して説明できると、「ビジネス感覚を持ち合わせている」と高評価に繋がりやすいです。たとえば、「課題のテーマからこういうマップを想定してイメージを汲みとり、このデザインに落とし込みました」「ターゲットから上代をこの程度に想定し、それを踏まえて色展開や素材を考えました」といったイメージです。
コレクションブランドなど高感度ブランドの場合、何からデザインのインスピレーションを受けているか、洋服に限らず普段どんなお店を見ているか、何にアンテナを張っているのか、その人の感度を問う質問が多いです。一方、商社・OEMだと、実務に関することや定量的な質問が多いですね。
「なぜこのデザインなのか」がちゃんと語れると、デザイナーとしてのスキルに説得力が増しますね。
はい、そのとおりです。デザイン画を提出するだけだと思っていたら、面接でプレゼンを求められてうまく話せなかった、という話もよく聞きますので、資料の作りこみはもちろん、プレゼンまでしっかり準備してください。
機密情報はマスキングするなど、提出物に対するコンプライアンス意識は年々高まっている
ポートフォリオを準備する上では、どのようなものを提出するのがよいのでしょうか?
自分の中で自信を持って実績が残せたと言える、思い入れの強いものがよいでしょう。デザイン画に加えて仕様書、マップ、商品の展開図、実際の商品の写真などがセットであると、ものづくりの一連がイメージしやすく、相手に伝わりやすいですね。
カテゴリーや素材など、さまざまなアイテムを手掛けてきた方は、できるだけ盛り込んだ形でデザイン画を出すことをおすすめします。幅の広さを強みとしてアピールすることができます。
提出物の中に手書きの文字がある場合、それが読みやすいか、ビジネスとして適切な表現かどうかも重要です。仕様書に貼ってあった付箋のコメントが強い口調だったことで、その方の人柄や仕事ぶりが合わないとお見送りになってしまった例もあります。
デザイナーとしてのスキルが高くても、ビジネススキルの面で評価が下がってしまうことがあるのですね。ほかに気を付けるべきことはありますか?
デザイン画や仕様書はデータ容量が大きくなりがちですが、一般的なマナーとして2~3MB以内に収めると良いでしょう。
対面面接の場合は、ポートフォリオの取り扱い方も意識しましょう。A4のクリアファイルに入れてそのまま出すのか、ブックに保管してそこから出すのかでは、印象がまるで違います。細部にいたるまで「クリエイティブであるか」を見られているので、面接官の目が届くすべてに気を配り、意識して準備しましょう。
「クリエイティブであるか」…デザイナーならではのポイントですね。
また、提出の際には、資料に機密情報が含まれていないかを必ず確認してください。昨今のコンプライアンス意識の高まりから、機密情報が入っていないかを厳しく見られています。
機密情報とは具体的に言うと?
たとえば、まだ世の中に出ていないアイテムのデザイン画や仕様書、秘匿性の高い素材の情報、利用している工場や外注先の情報、コストに関連する情報、仕様書に記載されている社名、個人名などがそれにあたります。記載がある場合はすべて塗りつぶす等、マスキングしてください。機密情報の判断基準は企業ごとに異なるため、少しでも該当しそうな情報はマスキングすることをおすすめします。
機密情報の取り扱い自体が評価にも繋がるのでしょうか?
情報の取り扱いに高い意識を持ち、リスクヘッジができているかどうか、ビジネスパーソンとしての姿勢も評価ポイントのひとつになっています。
もちろん、選考時に交わされるすべての情報は漏洩しないことが大前提ですが、今の世の中、どこで何があるか分かりません。そのため、世の中に公開されていない情報はすべて見えない形にして提出することが当たり前になっています。
そもそも仕様書自体が機密情報であるという考えのもと、「仕様書は出さないで欲しい」という企業もあります。提出書類の中に仕様書や商品開発に関する情報が入っていたことで、「管理能力に欠ける」とお見送りになったケースもあるほどです。
機密情報取り扱いの観点で提出ができない場合は、機密情報をマスキングしたポートフォリオを面接に持参し、その場で見てもらうケースもありますね。
そうした企業は今後も増えていくのでしょうか?
以前はそのまま提出していた内容も今はマスキングが必要になっていますし、大丈夫だろうと提出したところ、企業から「この内容は機密情報にあたる」と指摘されお見送りになってしまったケースもあります。価値観の変化とともに、この傾向は今後も高まると思います。
デザインスキルのみならず、ビジネススキルなど総合的に評価する傾向は年々高まっていますね。
デザイン画は、ブランドのテイストや企業の採用背景に合わせて準備を
デザイン画は、どのようなものが評価されるのでしょうか?
まずデザイン画は、感性やセンスが合うか、これまでのクリエイティブの経験からどんな提案をしてくれるかを重視しています。コロナが明けて以降は、新事業や新ブランド立ち上げが増え、社内にはいないクリエーションができる人を求める求人が増加傾向にあります。
デザイン画の評価が高かった事例を聞かせてください。
ベテランデザイナーの方がヤングブランドのデザイナー求人に応募した際、ターゲットを細かく研究してデザイン画を作成したところ、その分析力やデザイナーとしてのスキルが高く評価され、選考を通過した事例があります。デザイナーは実年齢と扱う商品のターゲット年齢のギャップを気にされる方が多いですが、企業に合わせてスキルをアピールすることで評価されました。
商社出身の方が高感度ブランドを受けた際、そのブランド向けに自分の感性を具体的に表現したマップやデザイン画を出したところ、そのセンスを高く評価されて選考に進んだケースもあります。
応募先のブランドに対して、ブランド理解とその人の感性が高く評価された事例ですね。
そうですね。より多くの情報が伝わるデザイン画ほど、評価に繋がりやすいです。たとえばデザイン画に着色しておらず、お見送りになったケースがあります。デザイン画に色があるだけで、素材や着心地などがイメージしやすくなるので、可能な限り着色をおすすめします。
業務でデザイン画を描く機会が少ない方でも、応募するブランドを研究した上で、平絵とマップをうまく活用することで、大手企業への転職成功された方もいます。自分の強みをどのように表現するかを考えることが大事です。
現職で手掛けた制作物を提出する場合、応募企業とのギャップが生まれることもあると思いますが、何を意識すればよいでしょうか?
デザイン画では「当社のブランドのテイストと異なる」と指摘されることが多いので、なるべく応募するブランドに寄せたデザイン画を選ぶことをおすすめしています。ただ理想を言えば、課題がなかったとしても、そのブランド向けのデザイン画を描くことをおすすめします。
そうですね。他のブランド向けに描いたデザイン画を使い回している方もいらっしゃいますが、できるだけ避けてください。現職と転職活動との両立で時間が厳しいとは思いますが、自社向けに用意したものではない、ということは企業に伝わってしまうものです。
若手や経験の浅いデザイナーは業務での制作物が少なく、学生時代のデザイン画を提出する方もいらっしゃいますが、それがショーで出すような独創的なデザイン画だと現実離れしてしまいます。思い入れのある画でアピールしたい気持ちは分かりますが、あまりおすすめはしません。
自己満足ではなく、企業やブランドの求めるものをどう表現するか、が重視されるということですね。
そうかと思えば、「どう解釈して表現するか」を見るため、一見ファッションとは関係ないような抽象的なテーマで課題を出す企業もあります。何が求められているか分かりにくいので、苦戦する方が多いですね。
その場合は、どのように対策すればよいのでしょうか?
アプローチの仕方は色々ありますが、一例として店頭に足を運び、並んでいる商品を手に取って、それぞれのアイテムがどんなテーマ・意図に沿って作られているかを考えてみることをおすすめします。そのイメージを自分の中で解釈することで、形にしやすくなると思います。
仕様書は、企業の企画・生産体制を理解してその基準にあったものを
では、仕様書はどのように評価されるのでしょうか?
先ほどもお伝えしたとおり、商社やOEM・ODMなど、工場と直接やりとりする企業のほうが仕様書を重視する傾向にあります。なので、ここでは商社やOEM・ODM向けに絞ってお話しします。
まず前提として仕様書は減点評価になりやすいです。
減点方式とは?
企業は、自社を基準に仕様書を確認します。業務に必要な仕様書のクオリティと比較して、「情報量が足りない」「指示が分かりにくい」「文字が読みにくい」といった形で判断をするため、減点評価になりやすいのです。
仕様書でマイナス評価にならないためには、応募企業のスタイルにもっとも近いものを準備することです。
その企業がどのような体制でものづくりを行っているのか、社内にパタンナーがいる環境なのか、それともパターンは外注で、デザイナーに高い水準での仕様書スキルが求められるものなのか。そういった情報から、提出物の準備をいただければと思います。
クオリティが求められ、減点方式で…と聞くと、一定の経験がないと評価されにくいような印象も受けますが…
いえ、そんなことはないですよ。経験の浅いデザイナーの方で、自分なりに「どのような情報・指示があれば分かりやすいか?」を考え、細かい情報まで仕様書に落とし込んで提出したところ、「経験が浅くても、ものづくりに真剣に向き合ってきたことが伝わる」と熱意のある姿勢が企業から評価された事例があります。
プラスアルファで熱意を伝えることも大切なのですね!
いかに企業ごとの特徴に合わせて準備できるか、うまくエージェントも活用を!
最後に、転職活動に悩んでいるデザイナーのみなさんに向けて、メッセージをお願いします。
今回お話ししたとおり、「こういうデザイン画・仕様書を準備すれば必ず通過する!」という決まった形はありません。それだけに、企業が求める意図を理解して準備することが大切です。
わたしたちクリーデンスでは、多くのデザイナーの方をご支援させていただく中で、デザイン画や仕様書の提出に関するポイント、課題への取り組みかた、機密情報に関する注意点など、多くのノウハウを蓄積しています。応募される企業の特徴に合わせてアドバイスいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください!
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