Fashion★シゴトNEWS
2020.06.01
<アパレル・ファッション業界>これからの転職活動でますます企業研究が重要なわけ―― 各企業はどのような局面を迎えているか?スタッフ座談会 <その1>
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下、新型コロナウイルス)に伴う緊急事態速報が5月25日(月)で解除されましたが、ファッション業界の転職マーケットにおいては、引き続き採用活動には慎重な姿勢を見せる企業が多く、求職者数に対して求人数が少ない、いわゆる「買い手市場」はしばらく続くものと見られています。
そんな状況で重要になってくるのが「企業研究」です。今各企業はどんな状況なのか?なぜ企業研究が重要なのか?どんな観点で企業研究し、企業と向き合うべきか?日々企業の採用担当者と接する営業(リクルーティングアドバイザー)と、日々求職者のみなさんと接するキャリアアドバイザーが語ります。
プロローグ:クリーデンスにご相談いただく求職者の方々の志向性や考えに変化は?
新型コロナウイルスの影響で、思ってもみなかった局面に立っている方も多いと思います。それに伴ってクリーデンスでも、今までとは価値観が変わったり、転職の優先順位が変わったりしている方のご相談を多くいただいています。具体的にどのような変化が見られるか、キャリアアドバイザーに聞きました。
川上職(デザイナー・パタンナー・MD・生産管理など)は保守化とポジティブ化の二極化
H(キャリアアドバイザー):新型コロナウイルスの影響を受けて以降、大きく4つのタイプの方に分かれていると感じます。
1.転職活動自体に不安を覚え、転職活動を止めている方
2.安定しているから、という理由から大手企業にのみ希望される方
3.こんな時世だからこそ、自分の人生を悔いなくチャレンジしたい!という方
4.会社に属して頼ること自体が不安なので、自分のスキルを活かして個力でやっていきたい!という方
私は主に川上職種の方の転職をサポートさせていただいていますが、MDや生産管理など、数値を見る職種の方は影響がダイレクトに伝わる分、保守的な1や2の考えに、デザイナー・パタンナーなど専門職の方はチャレンジングな3や4の考えに至る方が多いように思います。もちろん、人によりますのであくまで傾向レベルのお話です。
川下職(販売職・営業・プレス・マーケティングなど)は売上影響に直結し不安視する方が急増
G(キャリアアドバイザー):安定目的の大手志向の方が増えているのは、販売職など川下職種も同様です。ただ、先日レナウン社の民事再生法適応申し立てが発表されてからは、単に大手だから、知っているから、というだけではなく、「市場優位性の高い企業が知りたい」「信念を持ってビジネスしている企業は?」とご相談の傾向がやや変わってきました。「レナウン社のニュースをきっかけに、これからの働き方について考えた」という方が、職種や年代を問わず多かったのではないでしょうか。
その他の変化は大きく2点感じられます。
1.ジョブチェンジをご希望の方
特に販売職の方に多いですが、単に仕事の相談だけでなく、長い目で見てどんなスキルを身に付ければいいんだろう?というご相談が増えています。新型コロナウイルスによって店舗がダイレクトに影響を受けてしまったことから、このまま販売職として働き続けることに不安を持つ方が増えています。
2.「転職時の年収維持」の優先度が下がっている方
少し前までは、少なくとも現年収を下げない転職にこだわる方が多かったのですが、今は転職時点の年収が下がったとしても、やりがいを持って長く収入が得られる見込みがあれば、と考える方が増えてきました。
ファッション業界の各企業はどのような局面を迎えているか?
求職者のみなさんがさまざまな不安を覚える中、実際にファッション業界の各企業は今、どのような局面を迎えているのでしょうか?ここでご紹介している「例」はあくまで一部ですが、参考にしていただければと思います。
既存社員を守るための試行錯誤が第一優先、採用活動には慎重なかまえ
N(営業):直近の話では、5月25日に緊急事態宣言が解除されたので、まずはそれに応じて店舗を再開する、リモートワークから徐々に出勤に戻すなど、日常を変化させていくことに注力している企業が多いです。その中で、募集を再開する求人・見送る求人の精査がされていくでしょう。
店舗が休業していたこの2ヶ月ほどの期間については、特に多くの店舗や社員を抱えているほど、「まずは既存社員を守ることで精一杯」という企業が多かった印象です。そのためにどのコストをカットするか?を必死で調整しており、来年度の新卒採用を中止する、マーケティング費の削減、新規プロジェクトの中止など、各社苦悩しながら優先度を付けて判断されています。
EC化率が高いと言われる大手セレクトショップやアパレル企業でも、実店舗の休業による棄損分をカバーするまではできておらず、どこまで社員を守れるかは、非常にシビアな状況だと思います。
ぶれない軸を持っている企業は時代の変化に強い
Y(営業):どの企業も、少し先の未来で「今までにない変化をしていかなければならない」と肌で感じているとは思いますが、今をどう乗り越え、その先どのタイミングで、どんなスピードで何をどう判断すればよいのか?という迷いや不安は当然あり、企業の手腕が問われるでしょう。
個人的には、ぶれない軸を持っている企業は、それを大きな強みとして、苦境においても期待できるのではないかと思います。
例えば、長い歴史を持ちながらも、ブランドの世界観を大切にするため身の丈以上の拡大をあえてせず、路面店中心に出店している企業があります。決して大手と呼べる規模ではありませんが、路面店のほうが自分たちでコントロールしやすく、小回りがきくという点で、事業復活スピードは速いのではないかと感じています。
一見、長年変化がないように見える企業でも、企業の事業や組織、商品などをよく調べると、揺るぎない軸を持っている企業は、時代に合わせて多くのマイナーチェンジをしています。そのような変化に強い企業を見極めることが重要です。
地方の中小企業は、「EC中心のビジネスかどうか」によって二極化
S(営業):東京および近郊以外の地方は中小企業が多く、状況が二極化しています。
小売企業、特に地元のお客様に向けて顧客力を強みにしている企業は、店舗休業における影響が大きいです。EC導入が遅れた企業はさらに厳しく、慌てて注力するものの、もともとの土台が出来上がっていないので売上にも繋がりにくく、国の補填をどのように活用するかなどを含め、今を乗り越えるための試行錯誤をしています。
一方、EC中心、またはECのみで実店舗を持たない企業はほとんど打撃を受けておらず、むしろ売上を伸ばし採用を強化している企業も多いです。
こんな時だからこそ、企業の本質が見えてくる
H(キャリアアドバイザー):商売っ気が強いと思っていた企業が、何より社員を守るための動きを最優先したり、一方で「店舗休業時の自宅待機中、急にメール一本で契約終了と言われました」という企業があったり、ブランドが解散し、スタッフだけでなく部長クラスの方も行き場がなくなっている企業があったり…企業の動きや判断はその状況によってさまざまです。良くも悪くも「え、この企業が!」「意外!」と思うことも少なくありません。
こういうときに企業の本質が見えてきますので、企業研究の重要性を改めて感じています。
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