Fashion★シゴトNEWS
2021.03.08
アパレル接客は、消費者行動の変化にどう対応すべきか?坂本りゅういち氏セミナーを経て~SHIPS 椛澤 翔さんインタビュー
2021年2月2日から5日の4日間、クリーデンス20周年企画の一環として、オンラインセミナーイベント「明日の“はたらく”が楽しみになるオンラインセミナー 学ぶ FASHION WEEK」を開催しました。
今回は、実際にご参加いただいた、SHIPS 銀座店 副店長の椛澤 翔さんにお越しいただき、実際にセミナーに参加して感じたことや、この大きな時代の変化における仕事との向き合い方などについてお伺いしました。
今回、この方にお話を伺いました!
SHIPS 銀座店 副店長
椛澤 翔さん
数々の接客コンテストで賞を勝ち取り、2018年にはSC接客ロールプレイングコンテストにおいて大賞及び経済産業大臣賞に輝いた実績のある販売のスペシャリスト。現在は銀座店の副店長を務めながら、販売管理部にて販売員の育成も行っている。ウィメンズフロアでの勤務経験もあり、男女問わず幅広いスタイリング提案を得意とする。
椛澤さん、クリーデンス主催のオンラインセミナーイベント「明日の“はたらく”が楽しみになるオンラインセミナー 学ぶ FASHION WEEK」にご参加いただきありがとうございました!
こちらこそありがとうございました!
坂本りゅういちさんの「『お客さまから声をかけてもらうという発想』を作るセミナー」へのご参加でしたよね。参加しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
コロナ禍の影響で、市場は大きく変化しました。お客さまの動向が変わってきているのを肌で感じ、今までと同じ接客の仕方、働き方では厳しくなっているという現実があります。そんな中で何かできることはないか、変化のきっかけになればと思い、参加させてもらいました。
普段からセミナーなどの情報収集はしているのですか?
オンラインセミナーの参加は今回が初めてでした。
今回、坂本さんの話を聞いて、この時代に合わせて変化しなきゃいけないことを強く感じました。
本セミナーは、販売員のお客さまに対する「ファーストアプローチ」のもう一歩手前、「ゼロアプローチ」の仕掛け方がテーマ。背景として、「販売員から声を掛けられるのが苦手なお客さまが増えている」「コロナ禍で販売員からお客さまへ積極的にお声がけするのをためらう」など、積極的にアプローチすることがベストではなくなっている中で、お客さまから声を掛けもらいやすい空気作りをしましょう、というお話でした。
話を聞いて、新たな気付きなどはありましたか?
僕はアパレル業界に入って16年間、一時期MD・バイヤーの仕事もしていましたが、多くの時間を店舗で過ごしてきました。色んなトレーニングを受け、接客の大会にも出て、僕なりの接客に対する思いやこだわりを持っています。
それは、改めて言葉にすると当たり前のことですが、「お客さまに寄り添った接客を大切にする」ことです。
それを実現するため、時代の変化、お客さまの変化を捉え、接客スタイルも変化していく必要性を感じました。
具体的にはどのような変化が必要だと感じましたか?
外出すること自体が「リスク」となってしまった状況で、わざわざお店に来てくださるお客さまのお気持ちにどう応えていこう?と考えたときに、今まで以上にお一人おひとりのお客さまに合わせた、パーソナルなスタンスが必要だと感じました。
つまり、椛澤さんが大切にしてきた「寄り添う」ことがより重要になってくるということでしょうか。
はい。
すごく正直な話をすると、僕たち自身、リスクの中で仕事をすることへの怖さはゼロではありません。僕たちがお声がけすることでお客さまに不快な思いをして欲しくない、という思いから、お声がけを控えているスタッフもおり、今までと同じようにやっていくのは難しいと感じています。それでも、お店を開けてそこに僕たちが立つ以上、ご来店いただくお客さまに気持ちよく過ごしていただくための空気作りはしていかなければなりません。そのためには、寄り添い方の変化が必要だな、と。
接客ありきのお仕事だと、その距離感が本当に難しい状況ですよね。
坂本さんのお話の中で、お客さまから声を掛けてもらいやすくする雰囲気を作る方法のひとつとして、いきなりガチガチの接客に入るのではなく、まずは気さくに挨拶をしたり会話したりしてみよう、というものがありました。これはお客さまの雰囲気に合わせてぜひ実践してみたいと思いました。実際のところ、うまく実現していくのはなかなか難しいと思いますが(笑)。
坂本さんのセミナーでは、「販売員から声を掛けられるのが苦手なお客さまが増えている」という課題にも触れていました。コロナ禍の影響を抜きに、そういう変化は感じていらっしゃいましたか?
僕が直近3年ほど担当している「SHIPS 銀座店」は、いわゆる顧客さまの多いお店なので、他店と比べるとその変化は大きくないかもしれません。ただ、SNSやECサイトなどを通じて、ブランドや商品の情報を仕入れた上でご来店くださるお客さまが増えた実感はあります。そういう方は、目当ての商品をご自身で探して購入されるので、接客を必要とされないケースが多いです。
そのような接客を必要としないお客さまに対して、意識していた接客スタイルなどはありますか?
インターネットは確かに便利で生活に欠かせないものですが、そこで手に入れた情報が、その方にとってベストなものなのか?というのはまた別の話です。その商品が本当にその方にとってメリットのあるものなのか。購入目的に対して本当に必要なものなのか。お客さまが「買って良かった!」と思ってくださるかどうか。そういう付加価値のご提案は、販売員にしかできないことだと思っています。
先ほど仰っていた、「パーソナルなスタンス」の部分ですね。
僕がこの仕事を始めた16年前、買い物は『モノ』ありきでした。「ブランドの商品を買った」「銀座でこれを買った」「カリスマ店員と同じものを買った」ということが価値だったのです。それがだんだんモノからヒト軸に変わっていって、今は「生活に必要なものか」「持っていてテンションが上がるかどうか」など、より“その人らしさ”を追求する内面的な価値になっていったと感じています。
お客さまの消費者行動の変化に合わせて、販売員もそのスタイルを変えていく必要がある、ということが伝わりました。その一方で、これは販売員に限らずですが、意識を変えるのってすごく難しいことだと思います。
そうなんです。だからこそ、今回のようにセミナーを受けたり色んな情報を得たりして、変化を敏感に感じ取ることが大切だと思っています。
ただ、全員が全員、同じスピードで変化に対応できるわけではないので、それぞれの個性、強みを活かしながら、お店やブランド全体で変化していくことが重要です。
僕たち販売員にとっての軸はやはりお店です。「接客」を軸に、そこが得意なスタッフはより磨き続ける。デジタルツールの活用が得意なスタッフはインスタライブやオンライン接客など、新しい場にもチャレンジしていく。そんな風に販売スキルの活かし方がいろいろ出てくるんじゃないでしょうか。
アパレル業界全体が今厳しい中で、先行き不安で業界を離れる方もいらっしゃる中、椛澤さんの変化への貪欲さ、そして何よりお客さまを想う気持ちにすごく刺激を受けました!アパレル業界で働き続けたいという想いが伝わってきました。
時代の変わり目って不安なことに目が向きがちですよね。確かに今だけで捉えると、この業界で働くメリットを見出せなくなるかもしれませんが、長い目で見れば、ただやり方が変わるだけなんです。
人が社会の中で生きていく以上、洋服が無くなることはありません。生活に必要なものであると同時に、ワクワクして、テンションが上がって、楽しい気持ちになる、それがファッションの持つ魅力です。その根底が変わらない限り、僕自身の「洋服を通じて人と関わり、お客さまをハッピーにしたい」という思いも変わりません。
坂本さんのお話も含め、色んなやり方を模索しながら、今後もお客さまと向き合っていきたいと思います。
椛澤さん、今回は貴重なお話をありがとうございました。「ファッションの持つ魅力は変わらない、やり方が変わるだけ」という最後の言葉がとても響きました。今後のご活躍も期待しています。
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